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» 2020年09月11日 07時00分 公開

「もう行かない」チケット不正転売した「嵐」ファンの後悔

入場券不正転売禁止法が初めて適用されたケースとして注目を集めた、チケット転売事件の裁判が8月、大阪地裁で開かれた。嵐のチケットを転売した女性は少しでもいい席を確保するため、チケットの転売や身分証偽造を行っていた。

[産経新聞]
産経新聞

 憧れのアイドルに少しでも近い席で――。ファンなら当然の心理が増長し、気付ば一線を越えていた。年内で活動を休止する国民的人気グループ「嵐」の公演を巡り、チケットを転売したとする女(24)が摘発・起訴された事件の手口は、入場に必要な身分証を偽造するなど大胆で悪質だった。中学時代から嵐を追い続けてきた女はなぜ、違法行為に手を染めたのか。8月、大阪地裁で開かれた公判でいきさつと詳細が明かされた。(桑村朋)

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「感覚がまひ」

 「(ライブや公演に)今は参加する気にもなれないし、しないと思う」

 8月27日、大阪地裁の法廷。黒いスーツ姿の女はうつむきがちに、被告人質問に臨んだ。次に消え入りそうな声で、事件を振り返った。「良い席を取らないとという気持ちだった。感覚がまひしていた」

 チケットの不正転売が社会問題化したことを機に、2019年6月に施行された入場券不正転売禁止法違反などの罪で起訴された女。事件は同法が初めて適用されたケースとしても注目を集めた。

 起訴状などによると、女は19年6〜9月、京セラドーム大阪や東京ドームであった嵐のコンサートやイベントのチケットを不正転売していた。

身分証偽造も

 公判での説明によると、女はTwitterを使って転売されているチケットを検索。定価を超える値段で複数枚を入手していた。

 チケットはスマートフォンなどにQRコードが表示される「電子チケット」だった。ファンクラブ会員だけが申し込むことが可能で、当然、転売は禁止されている。

 チケットの複数枚入手の狙いは、少しでも良い席に近づくこと。自分が使う分以外のチケットは、改めてTwitterで購入者を募集した。再転売の価格は定価の8〜14倍程度で、約11万円のもうけがあり、それは次のコンサートに向けた「軍資金」となった。

 もっとも、電子チケットだけでの入場は不可能だ。

 QRコードには、購入者と同行者の名前や人数の情報が埋め込まれており、入場時、写真付き身分証の名前や顔が一致する必要がある。そのため、女は実在する会社の訪問介護職員と偽った身分証を偽造。自身らの顔写真を付けた上で、転売相手を同行者にして不正に入場していた。

 嵐のイベントでは、本人確認後の入場時に初めて座席の場所が明らかになる仕組みのため、女は最も見やすい座席を自分に、それ以外を転売相手に渡していたとみられる。

「摘発なければ……」

 女は中学生のころ、嵐のファンになった。高校生でライブに初参加。ファンクラブにも入会した。

 当時は正規の方法で購入していたが、それだけで必ず良いチケットが手に入るとはかぎらない。17年ごろからは、転売サイトで定価を超えた値段でチケットを買うようになった。

 母親と一緒にコンサートに参加したこともあり、その際は自身と母親の2人分の身分証を偽造した。

 好きなアイドルに近づきたい。そんな純粋な思いの裏側で、ルール違反をもいとわなくなった。

 法廷には、北海道から証人として駆け付けた父親の姿があった。「転売は知らなかった。コミュニケーションが不足していた。申し訳ない」。深々と頭を下げた。

 大阪地裁の栗原保裁判官は判決でこう指弾した。「興行主の努力を無にする犯行」。女に言い渡されたのは、懲役1年6月、執行猶予3年、罰金30万円、偽造身分証明書の没収(求刑懲役2年など)の有罪判決だった。

 「(摘発がなければ)ずっとやり続けてしまっていた」。公判で反省の弁を述べた女。更生を誓うとともに、嵐の公演には「もう行かない」と話した。

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