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» 2020年10月06日 07時00分 公開

東証売買停止で風当たり強まる富士通、DX成長戦略に暗雲漂う

東京証券取引所のシステム障害を受け、富士通への風当たりが強まっている。10月5日の会見で同社は、DXを核とした成長戦略を掲げたが、早くも暗雲が漂いつつある。同社の事業育成が停滞すれば、日本全体のデジタル変革にも影響が出かねない。

[産経新聞]
産経新聞

 1日に発生した東京証券取引所のシステム障害を受け、障害の原因となった機器を納めた富士通への風当たりが強まっている。原因究明の結果はまだ出ていないが、その内容次第では同社の評判まで傷つきかねない。人工知能(AI)などの新技術で社会やビジネスを変革する「デジタルトランスフォーメーション(DX)」を核とした新成長戦略に、早くも暗雲が漂い始めている。

 「障害の原因となった機器の納入、システム開発を担当する企業のトップとして、心よりおわび申し上げる」

 5日に富士通がオンライン上で行った事業説明会の冒頭、時田隆仁社長は神妙な面持ちで頭を下げた。時田氏が公の場でシステム障害に言及するのは初めてだ。いつもは企業文化を変える狙いから、Tシャツなどのラフな格好で登場することが多いが、この日はスーツ姿で、謝罪の場面ではネクタイを締めていた。

 説明会では、自社のDX推進に5年間で1000億円超を投じる方針が明かされたが、質疑応答では障害に関する質問が相次いだ。原因について時田氏は「(究明中で)申し上げる段階にない」とだけ述べた。

 障害は、東証の株式売買システム「arrowhead」を構成するストレージ(外部記憶装置)のメモリが故障し、バックアップへの切り替えもうまくいかなかったことで起きた。arrowheadの設計・開発を手掛けたのは富士通で、ストレージも同社製の「エターナス」だった。

 今回のような障害が発生した場合、システムや機器の受注側に責任が及ぶことはあまりない。東証の宮原幸一郎社長も1日の記者会見で「(富士通への)損害賠償(請求)は現時点で考えていない」と述べた。

 ただ、東証の大規模システム障害は2005年と11年に続き3度目で、富士通はその全てに絡んでいる。重要なシステムを相次ぎ任されるほど信頼されているともいえるが、トラブルは過去の実績を帳消しにしかねない。

 同社の経営はここ数年、停滞感が目立ってきた。18〜19年には中国勢や韓国勢に押されていたスマートフォン事業やPC事業を手放す一方、5000人規模の社内外への配置転換を打ち出し、うち約2850人が希望退職で会社を去っている。これにより利益はかさ上げされ、今期は本業のもうけを示す連結営業利益で2年連続の2000億円超えを狙うが、20年前に5兆5000億円近くあった売上高は、3兆6100億円まで減る見通しだ。

 時田氏は、19年6月の社長就任時からDX推進を訴え、自社の経験をビジネスに役立てる方針を強調してきた。優秀なデジタル人材を3000万〜4000万円で処遇する方針を掲げた他、1月には顧客のデジタル対応を支援する新会社を設立。受注実績も積み上げつつあっただけに、システム障害には水を差された格好だ。「DXの旗振り役になる」(時田氏)と宣言する同社の事業育成が停滞すれば、同社の成長はおろか、日本全体のデジタル変革にも影響が出かねない。(井田通人)

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