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» 2020年10月07日 07時00分 公開

ラジオもネットも「ながら聴き」が活況 コロナで高まる存在感 (1/2)

ラジオ配信サービスradikoが、ラジオ復権の切り札と期待されている。ラジオ業界は同社の成長を歓迎しながらも、「新型コロナが収束すれば元に戻るのではないか」と懸念しており、コンテンツ力強化が鍵になりそうだ。

[産経新聞]
産経新聞

 ラジオ復権の切り札と期待される取り組みに番組をインターネット配信するradiko(東京都)がある。設立から10年。民放全99局が参加し、月間利用者数は約900万人で推移するまでに成長した。ただ、勢いが持続するかは分からない。ラジオの魅力を発信し、生活に定着させることが課題だ。(粂博之)

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スマホ普及が後押し

 日曜午後に放送されている「山下達郎の楽天カード サンデー・ソングブック」(東京エフエム)は、この秋に放送開始28周年を迎えた長寿番組だ。9月27日放送の番組中、ミュージシャンの山下達郎さんは、ある異変を語った。

 1970年代から活躍する山下さんのファンは中高年層が中心だが「信じられないこと」に「10代、20代の方々が本当にたくさん(メールやはがきを)くださいます」。その要因は「radiko」だろうと指摘した。

 2010年にサービスを開始したradikoは、スマートフォンの急速な普及に後押しされてきた。ビデオリサーチが19年実施した調査によると、ラジオを聴く際にネット配信を利用(スマホ、PC、タブレット端末の合計)は35%で、ラジオ受信機の36%と拮抗(きっこう)する。世代別にみると、20代の57%、30代の48%がネット配信を利用していた。

受信機なくても聴ける気軽さ

 radikoは番組放送と同時配信されるだけでなく、1週間以内ならいつでも聴ける「タイムフリー」や有料会員向けに居住地以外の放送も聴ける「エリアフリー」などの機能も持つ。

 有料会員は約82万人で大部分が東京都内在住者という。radikoでは、出身地や転勤などでなじみのある土地の放送が聴かれているとみる。ゲーム終了までのプロ野球中継、地方で活動するアーティストや芸能人の出演など、東京では聴けない番組の人気は高い。

 新型コロナウイルスの感染拡大で在宅時間が増えたこともあり、今春以降、月間利用者数は過去最高水準で推移。「さまざまなコンテンツのネット配信が普及し、多くの人がなじんできた」ことが影響しているとradikoの青木貴博社長は指摘する。「受信機がなくても聴ける、と気付いたリスナーが移行してきている」

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 東京都八王子市の男性会社員(53)は最近、出勤前はテレビをつけずラジオを聴くことにした。「テレビだと目を奪われてあっという間に時間がたってしまう」からだ。電波状況が悪い地域だが、radikoでストレスなく聴けるという。

コンテンツ強化がカギ

 ただ、radikoのリスナー全体に占める若い層の比率は少ない。10代は男女ともわずか1%台で、20代と合わせても10%に満たないという。「サンデー・ソングブック」の異変は、もともと存在した若いリスナーがradikoで目覚め、動き出した結果といえそうだ。

 若いファンをいかに開拓するか。ラジオ業界の危機感は強く、radikoと全局はジャニーズ事務所のアイドルを起用したラジオドラマを制作し20年12月に放送、配信することを決定した。

 ラジオ業界はradikoの成長を歓迎しながらも、確かな自信を持てないでいる。「新型コロナウイルスの感染拡大が収束すれば元に戻るのではないか」(大手民放関係者)。東日本大震災でラジオが注目されながらも、しばらくたつとリスナーが減少した苦い経験があるからだ。そこに広告収入の減少、設備の老朽化など重い課題がのしかかる。

 半面、音声メディアは新たなコンテンツとして注目を集めている。radiko、ポッドキャスト、ボイシー、ラジオトーク……。動画に続いて音声のネット配信サービスが相次いで登場、市場は勢いづく。

 しかし「黙っていても成長するわけではない。コンテンツ関連のプレーヤーの力を集めるべきだ」と青木氏は言う。そうした時代にラジオは、ネット、コンテンツの制作者とどのような関係を結び、選ばれるメディアへと脱皮するのかが問われている。

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