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» 2020年10月12日 07時00分 公開

駅ホームをスマホで音声案内 視覚障害者の外出を支援

JR西日本やNPO法人が視覚障害者向けにITを活用した音声案内の整備を進めている。QRコードやタグをスマホで読み込むと周囲の状況を音声で知らせる仕組みで、視覚障害者が介添えなしで外出するのを手助けする。

[産経新聞]
産経新聞

 視覚障害者が安心して歩けるように、JR西日本やNPO法人が情報通信技術(ICT)を活用した音声案内の整備を進めている。駅ホームでの事故の防止や介添えなしの気軽な外出につながると期待され、視覚障害者らは早期の普及を願っている。(中井芳野)

 「改札です。直進6m」

 「前方に上り階段です。18段上ります」

 神戸市中央区の山陽新幹線新神戸駅の構内。白杖を手にした男性を誘導するのは、男性の持つスマートフォンの自動音声だ。

 構内の分岐点や階段前などのポイントには、点字ブロックとともに数m間隔でQRコードが貼り付けられ、男性がスマホのカメラを下に向け、専用アプリでコードを読み込むと音声が流れるシステム。男性は案内通りに歩き、事前に設定していた目的地の新幹線7号車入り口まで、すんなりと到着することができた。

 同駅では現在、JR西によるQRコードを利用した案内アプリ「shikAI(シカイ)」の実証実験が行われている。視覚障害者の間では「欄干のない橋」「柵のない絶壁」と例えられるほど危険の多い駅ホーム。その安全性を高めようと始まった取り組みで、2021年3月までに視覚障害者約50人に同アプリを利用してもらい効果を検証する。その結果を踏まえ、23年に大阪駅北側の再開発地区「うめきた」地下で開業予定の新駅への導入を目指しているという。

 20年5月にはバリアフリー法が再改正され、街中に点字ブロックやスロープが設置されるなど道路や交通機関、建物内での対策は進んでいる。

 その一方で、人混みに遮られ、耳や点字からの情報取得が難しいスーパーや商業施設については依然、介添えなしで外出するのは気が引けるという視覚障害者が少なくない。

 こうした“心の障壁”を取り除こうと、JR西と同様にICTを使った環境整備に力を入れているのが、神戸市中央区のNPO法人「アイ・コラボレーション神戸」だ。

 障害者の就労支援を行っている同NPOでは、交通機関や美術館などに音声案内アプリ「Navilens(ナビレンズ)」の導入を呼びかけている。このアプリもshikAIと同じように、情報が埋め込まれた四角い紙(タグ)をアプリで読み込むと音声案内が流れるようになっている。

 同NPOによると、スマホとタグの距離が最大27m離れていても読み取りが可能で、その上、紙でできたタグは低コストで発行できることから、普及させやすいとみている。

 約30年前に遺伝性眼病で全盲となった愛媛県松山市の和田浩一さん(61)は「点字ブロックは行き止まりや直進など目の前の情報は教えてくれるが、どこに何があるかまでは分からない」と指摘。一方、スマホによる音声案内では「改札やトイレ、売店の場所まで知ることができ、自分の力で目的地に行ける自信や喜びにつながる。早く各地で整備してほしい」と期待を込めた。

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