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» 2020年10月14日 07時00分 公開

はんこロボ導入進む、押印廃止の逆風下でも書類の山と戦う

官民で脱ハンコの動きが活発化する中、デンソーウェーブらが開発した押印を自動化するロボットの導入が進んでいる。紙書類の廃止にはまだ時間が掛かるため「今は過渡期で、このロボットは必要とされる」とする見方もある。

[産経新聞]
産経新聞

 仕事の効率を低下させるとして悪役になってしまった、はんこ。電子署名に移行すべきだとの指摘はあるが、押印を要件とする手続きは多種多様で一気には進められない。そんな中、書類を1枚1枚めくって押印できるロボットが登場した。はんこ文化を風刺する製品にもみえるが、至って真剣に作られている。この夏から本格的に売り出され、導入に向けて検討に入った企業もあるという。

photo 自動で押印する機能を備えたオフィス用ロボット「COBOTTA」(日立キャピタル提供)

書類まとめてお任せ

 アーム先端にセットされたはんこを朱肉に押しつけ、滑らかな動きで押印欄へ。処理した書類は、アームや定規のような道具を使ってめくり次の書類をセット……。

 産業用ロボットメーカーのデンソーウェーブ(愛知県)が開発したロボット「COBOTTA」だ。一般的なオフィスのデスクに置けるサイズで、重さは約4kg。ロボットアーム、カメラ、スキャナーなどを備えており、とじた書類のページを繰って表面に光線を走らせて読み取り、データ保存することもできる。

 日立キャピタルと日立システムズがプログラム作成などで協力した。2019年末に発表し、ようやく実証実験が終了。7月からロボット利用の月額制サービスを売り出した。

 人間が目を通し押印してもよいと確認した書類をまとめてロボットにセットすることを想定している。大量の書類がある場合、昼休み前や帰りがけにセットしておけば、午後一番や翌日の始業前に作業が終わっているというわけだ。

自治体、書類電子化は1割強

 「これからペーパーレス化が進むのに意味があるのか」

 「ロボットよりも電子決裁を導入した方がよい」

 ロボットを発表した後、そんな疑問や指摘もあった。しかし、売り出してみると早速反応があり、大手企業数社と商談中という。日立キャピタルの担当者は「地方自治体への申請などで毎日大量の書類への押印が必要な企業は多い」と指摘する。

 企業文書の電子化を支援するペーパーロジック(東京都)が20年5月、全国の自治体職員111人を対象に実施した調査によると、業務で扱う申請が「全て電子化されている」という人は0.9%。「ほとんど電子化されている」も11.7%にとどまった。一方で、「ほとんど書類」は55.0%、「全て書類」は24.3%だった。

今は過渡期

 菅義偉内閣は、中央省庁でのはんこ廃止を強力に進める考えだ。これまでの検討では9割超が廃止できる見通しという。河野太郎行政改革担当相は「できるものはどんどんやる」と、年内に政省令改正を進め、関連する改正法案を21年の通常国会に提出する。

 規制改革推進会議では今後、企業の生産性を高めるため商取引での押印、書面の削減もテーマにする。実際、ペーパーロジック社の別の調査(19年11月)では、首都圏に勤務する人の82%が「はんこ決裁で仕事の進みが遅くなる」と回答しているし、在宅勤務を命じられながら、押印だけのために出社するケースも問題視されており、はんこ廃止の流れが強まってはいる。

 ただ、財政、マンパワーに限りのある地方自治体で、はんこ廃止がいつ実現するのかは見通せない。企業が許認可申請のため紙に押印する作業から逃れるのは難しそうだ。また、社内文書の電子化も途上という企業は少なくない。

 日立キャピタルは「今は過渡期で、このロボットは必要とされる」とみている。時期が来ればCOBOTTAが用済みになるかといえば、それも違うという。制御用のプログラムは外部のクリエイターでも手を加えられるよう一部を公開しており、さまざまな用途に対応できる。(経済部編集委員 粂博之)

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