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» 2020年10月21日 07時00分 公開

閣僚の名刺や甲子園の土も出品、フリマサイトの薄い線引き

フリーマーケットサイトで近年、甲子園の土や政治家の名刺など、非売品であるはずの物品が頻繁に取引され是非をめぐる議論が活発化している。専門家は「健全なマーケットを維持するという意識を利用者に浸透させることが重要だ」と訴えている。

[産経新聞]
産経新聞

 甲子園の土、政治家の名刺――。個人間の売買を仲介するフリーマーケットサイトで近年、非売品であるはずの物品が頻繁に取引され、是非を巡る議論が活発化している。偽ブランド品や個人情報が絡む物品の転売は一般的に禁じられているが、こうした“レアもの”は規制の対象外。ネット上では「非売品こそがフリマの魅力」といった肯定的な意見がある一方、「犯罪に悪用されるかもしれない」と懸念する声も。専門家は「サイトの出品者はまず、モラルを身につけるべきだ」と訴えている。(土屋宏剛)

photo 有名政治家の名刺が取引されているフリマサイト=8日午前

首相名刺は1万円超

 《菅義偉 名刺 官房長官 首相》《自民党議員名刺 麻生太郎他3名4枚セット》

 大手フリマアプリ「メルカリ」のサイトには、大物政治家の名刺がズラリと並ぶ。いずれも「激レア」や「コレクター向け」といった説明が添付され、菅義偉首相が官房長官時代に使用したとみられるものが1万3500円、麻生太郎副総理のものは8999円で出品されていた。

 他のサイトに目を向けると、プロ野球阪神タイガースと甲子園球場が、日本高野連に加盟する野球部と軟式・硬式女子野球部の高校3年生全員に贈った「甲子園の土」入りのキーホルダーが出品され、数千円から1万円の値が付いていた。

 いわゆるレアものと呼ばれる物品の取引を巡っては、SNS(会員制交流サイト)上で議論が起きている。

 「キーホルダーの転売は贈った側の気持ちを裏切る行為」「名刺が犯罪に悪用されるリスクがある」といった否定的な声の他、「規制対象でなければ問題ない」「非売品の取引こそがフリマの魅力」などと容認する意見も並んでいる。

出品可否は個別に

 一般的にフリマサイトの運営側は、個人情報が記されたもの▽武器として使用される危険があるもの▽偽ブランド品をはじめとする偽造品――などの出品を禁じている。では、レアものについてはどう考えるのか。

photo

 オークションサイト「ヤフオク!」によると、名刺の記載内容が事務所の住所や電話番号といった公開情報に限られたものは、規制の対象外だ。甲子園の土入りキーホルダーに関しては「法的に問題がない」(ヤフオク担当者)ことなどを理由に、現在のところ出品を認めているという。

 レアものの出品の可否に明確な線引きは存在せず、運営側が個別に判断しているのが現状だ。ただ、社会状況の変化で出品が突然禁じられた物品もある。

 新型コロナウイルスの感染拡大でマスクの入手が困難となった際には、高値転売が法律で禁止された。8月に解除されたが、各サイトの運営側ではマスクやアルコール消毒液といった衛生用品の転売そのものを禁止し、一部の運営会社は今も規制を続けている。

“健全なマーケット”を

 そもそも非売品のレアものは、取引を前提に製造されていないため、模倣や偽造が容易なことも多い。サイトの運営側も偽造品が出回ることを懸念して出品状況を監視しているが、アップされた画像だけで真偽を判断することは難しい。

 また、政治家の名刺や甲子園の土入りキーホルダーなど、現在は出品できる物品についても、偽造品の流通などが確認されれば「規制対象に加える可能性もある」(ヤフオク担当者)という。

 レアものの出品について、転売問題に詳しい小林裕彦弁護士は「規制対象品が増えると、フリマサイトの魅力が損なわれかねない」とした上で、「出品の規制に関する議論よりも、“健全なマーケット”を維持するという意識を利用者に浸透させることが重要だ」と訴えている。

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