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» 2020年11月02日 07時00分 公開

ベンチャーで広がる「都心離れ」 テレワーク契機、移転支援サービス相次ぐ

新型コロナの影響でテレワークの導入が進む中、コスト削減のためにオフィスの移転や縮小に動くベンチャー企業が増えている。東京都心ではオフィスの空室率が上昇。賃料も6年8カ月ぶりに下落するなど影響が出ている。

[SankeiBiz]
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 新型コロナウイルス感染拡大でテレワークの導入が進む中、コスト削減のためにオフィスの移転や縮小に動くベンチャー企業が増えている。東京都心のオフィスは空室率の上昇が目立ってきており、オフィス移転や縮小を後押しするサービスも相次いで登場。東京のオフィス事情は大きく変わる可能性がある。

photo QBITロボティクスの製品展示スペース。移転前に比べてオフィス面積は半減した=東京都中野区(同社提供)

 「(新型コロナで)テレワーク中心となり、オフィススペースが縮小できる」

 ロボット開発のQBITロボティクスは10月2日、本社を東京都千代田区から中野区に移転した。商談向けのロボット展示スペースは従来並みに確保したが、トータルのオフィス面積は100平方メートルと移転前の約半分。通信系ベンチャーのソラコムも2月に導入したテレワークが定着し、11月に港区のオフィス面積を3分の1まで縮小する。

賃料コストの見直し

 緊急事態宣言などをきっかけに、企業は感染防止対策としてテレワークの活用にかじを切った。東京商工会議所によると、3月に26.0%だったテレワーク実施企業の割合は5月下旬から6月上旬の調査では67.3%に上昇している。そうした中で浮上したのが、賃料コストのかかるオフィスの扱いだった。

 「企業が生産性を高める上で不要なスペースを見直す動きはこれまでもあったが、新型コロナ禍でその流れは加速した」

 不動産サービス大手ジョーンズラングラサール(JLL)リサーチ事業部の大東雄人ディレクターはこう指摘する。訪日客向けアプリ開発を手掛けるワメイジング(東京都港区)のように全従業員を在宅勤務に切り替え、10月末でオフィスを全面退去する事例もある。

 市況にも変調の兆しがみられる。不動産仲介会社の三鬼商事が東京都心を対象に調べた9月末時点のオフィス平均空室率は前月から0.36ポイント上昇し、3.43%となった。

 空室率は貸室の面積のうち空いている割合だ。都心への拠点の集約や事務所拡張の需要が高まり、2020年2月末時点で過去最低の1.49%を記録した。だが、コロナの影響で反転し、7カ月連続で悪化して3年半ぶりの高水準となった。

 平均賃料も8月末に6年8カ月ぶりに下落し、9月末も3.3平方メートル当たり2万2733円(前月比0.4%減)と2カ月連続で下落した。空室が増え、賃料引き下げにつながっている。

 こうした流れを商機ととらえたビジネスも広がりを見せる。アクトプロ(千代田区)は、退去を希望する企業と出店場所を探す企業とを結び付ける。19年5月に始めたが、20年3月以降に問い合わせが殺到。2月まで平均月60件前後だった新規会員数は5月だけで約1100件まで跳ね上がった。月500円から家具を貸し出すサブスクライフ(渋谷区)も注文や問い合わせが新型コロナ流行前の3倍に上っている。

大企業まで及ぶか

 ただ現状、オフィス移転や縮小に動くのは、中小・ベンチャーが中心。富士通や東芝などがオフィス面積を削減する方針を示しているが、潮流が大企業にまで及ぶかは疑問符が付くという。

 オフィスの賃貸契約は複数年が基本で、中途解約は違約金のコストが重くのしかかる。情報管理上も、社内の端末を社外に持ち出して業務を進めることは危険性と隣り合わせだ。成果主義など人事評価をどう設計し直すかも課題という。

 大東氏は「従業員を多く抱える大企業になればなるほど、いろいろな弊害があり、対応には時間がかかるのでは」と予想する。

 3年後の2023年は、東京・虎ノ門を中心にオフィスビルの再開発が完成、開業を迎える。それまでに新型コロナの治療薬やワクチンの開発で進展が見られれば、「旺盛なオフィス需要は以前のように戻るのが自然」(不動産関係者)で、都市開発が着々と進められているエリアにオフィスを構えたいとの需要が出てくることも予想される。(岡田美月、松村信仁)

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