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» 2020年11月06日 07時00分 公開

オンライン診療の明と暗 コロナ感染リスク削減や利便性向上の一方、なりすましや地域医療の崩壊リスクも

コロナ禍の特例措置として認められている初診時からのオンライン診療を巡り、恒久化に向けた制度設計が本格化している。感染症対策や利便性向上につながる一方、有名意思への一極集中や、なりすましなどの問題もあり慎重意見も出ている。

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 コロナ禍の特例措置として認められている初診時からのオンライン診療を巡り、菅義偉政権の規制改革で恒久化に向けた制度設計が本格化している。院内感染対策や高齢者の通院コスト減少など利便性が高い一方、都市部の有名医師への「一極集中」が進めば、地方の病院がつぶれてしまう懸念もあるというのだ。

 政府は初診時からのオンライン診療の特例を当面継続。2022年にかけて関係機関での患者データの共有や、電子処方箋の全国運用も始める。7月に取りまとめた経済財政運営の指針「骨太方針」に「診察から薬剤の受け取りまでオンラインで完結する仕組みを構築する」と明記した。

 オンライン診療について、医療リスクマネジメントに詳しい内科専門医で中央大大学院教授の真野俊樹氏は、「当初はへき地や島嶼(とうしょ)部の住民などのために始まった。その流れで新型コロナの感染リスクが削減され、利便性が高くなるというメリットもある」と解説する。

 9月から施行された医薬品医療機器等法(薬機法)改正で、オンラインの服薬指導が解禁となったことを受け、調剤薬局大手の日本調剤もオンライン薬局サービスを開始した。対面指導とオンライン指導の組み合わせで可能になる。同社広報部は「オンライン診療は前から認められてたが、服薬指導がついてこられなかった現状があった。一貫してできるようになったのは大きい」と語る。

 一方、オンライン診療は対面よりも得られる情報が少ないため、重い腹痛や目の外傷、アレルギー性疾患など患者の状態の見極めが難しい治療には向かないとされる。日本医師会も「患者の情報が不足する中で問診と視診だけの判断になる」と慎重姿勢を示す。

 医師と患者双方の「なりすまし」の危険性もある。医師の場合は不適切な診療による健康被害、患者の場合は薬剤の不正入手などが考えられ、日医は本人確認の徹底を主張した。

 女性向けにピルを処方するオンライン診療プラットフォームを提供するネクストイノベーションでは、12月に人工知能(AI)による本人認証システムの導入を予定している。「医師のなりすましについても、病院を訪問のうえで免許証や所属の確認を行う」(広報担当者)としている。

 オンライン診療は患者にとって利便性が高い一方、「もろ刃の剣でもある」と前出の真野氏。「患者が都市部の医療機関に集中し、出来高払い中心の地方の開業医の経営が成り立たなくなる恐れがある。地方の診療所が廃業になれば、雇用問題や救急対応などのリスクもある。エリアで制限を設けるなど一定の規定は必要ではないか」との見解を示した。

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