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» 2020年11月13日 07時00分 公開

ネット誹謗中傷対策、被害早期救済を重視 表現の自由保護で課題も

総務省がネット上で誹謗中傷を受けた場合に投稿者を特定しやすくするための制度見直しに向け、裁判手続きの迅速化を柱とする最終案を取りまとめた。被害者の早期救済が可能になる一方で、乱用されれば表現活動を萎縮させる恐れもある。

[産経新聞]
産経新聞

 総務省は12日、インターネット上で匿名の誹謗中傷を受けた被害者が投稿者を特定しやすくするための制度見直しを話し合う有識者会議を開き、新たな裁判手続きの創設を柱とする最終案を取りまとめた。従来の情報開示訴訟より迅速に開示が進むようにして手続きの負担を減らし、悪質な投稿の抑止や被害者の救済を図る。2021年の通常国会に関連法の改正案を提出する。

 総務省の対策案は、被害者の救済を重視する内容となったが、表現の自由への配慮から対策案には慎重論も根強く、いかに双方のバランスをとるべきかとの議論は続きそうだ。海外事業者への規制といった課題も積み残しとなっており、対策に実効性を持たせるには、今後の制度設計と適切な運用が求められる。

 「被害者が救済される選択肢が増える」。有識者は会議で、新たな裁判手続きの創設を柱とする制度見直しを了承した。

 だが、これまでの会議では、「議論が拙速だ」との批判も出ていた。

 投稿者の個人情報開示に関する議論は、個人に対する誹謗中傷などの被害者を保護するために20年4月末から始まった。これまでの開示手続きは煩雑で、負担も大きく、泣き寝入りする被害者も少なくなかった。自由を重視するインターネット文化から、規制強化には慎重な声が大きかったことが背景に挙げられる。

 5月にテレビ番組に出演したプロレスラーの木村花さんが会員制交流サイト(SNS)サービスで悪質な書き込みを受け死去すると、誹謗中傷の被害を救済する論調が加速し、世論も後押しした。

 一方で、被害者救済に重きを置く今回の最終取りまとめは大きな転機となりそうだが、誹謗中傷と正当な批判の線引きは難しく、明確な基準はないのが現状。規制強化は表現活動に過度な萎縮を招く恐れもある。

 表現の自由への配慮から、投稿者の異議申し立てや、正当な批判を封じる目的で制度が乱用されるのを防ぐ仕組みも加わった。誹謗中傷の基準が確立するには判例などを積み重ねるしかなく、制度の施行後に表現活動に与える影響を見極める必要がある。(高木克聡)

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