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» 2020年11月26日 07時00分 公開

オフィスの空室率ジワリ上昇 テレワーク普及で需要の減退確実、マンション転換で価格下落圧力

テレワークの普及でオフィスの空室率がジワリと上がっている。オフィスの賃貸契約は、借り主側から解除する場合は6カ月前の通知とするケースが一般的で、今後は空室率がさらに上昇すると予測できる。

[ZAKZAK]
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 オフィスの空室率がジワリと上がっている。三鬼商事が公表している東京ビジネス地区のオフィス空室率は9月時点で3.43%。6月以降は上昇率が高まっている。

photo オフィスの空室率が上昇。それがマンション価格の下落へとつながっていく(写真と本文は関係ありません)

 オフィスの賃貸契約というのは、借り主側から解除する場合は6カ月前の通知とするケースが一般的だ。4月上旬の緊急事態宣言以降にテレワークが急速に普及したことを考えると、今後は空室率がさらに上昇すると予測できる。

 さらに、ヤフーなどのネット系大手企業もテレワークを常態化させるという。コロナがある程度収束しても、オフィス需要が回復するとは考えない方がいいだろう。

 オフィスは不動産市場の中の1つのカテゴリーだが、他の分野への影響も無視できないものがある。

 例えば、職住が混在しているようなエリアでは、今後一層オフィスビルからマンションへの転換が進むだろう。老朽化したビルが取り壊されて分譲マンションに変わっていくのだ。つまり、マンションの事業用地がより多く供給される。

 その結果、マンションデベロッパーが仕入れる土地の価格自体が下落することもあり得る。土地が今までより安く仕入れられれば、販売価格にも反映される可能性が高い。新築価格の下落である。

 こういう流れは、われわれがはっきりと可視化できるまでには、今から1年以上の時間がかかりそうだ。オフィス需要の減退が確実なだけに、マンション市場への影響も時間が経過することでしっかりと現れるはずだ。

 職住が混在しているエリアをいくつか挙げるとすれば、東京なら中央区の人形町や品川区の大崎周辺など。大阪なら環状線内の堺筋や谷町筋である。そういったところでは、コロナ以前からオフィス系の建物が徐々にマンションに建て替わっていた。今後はその動きに一層拍車が掛かる。

 ただ、こういったエリアにマンションに対する強い需要が存在するわけではない。これまでは都心近接という条件によって、ある程度好調に新築物件が売れていた。しかし、テレワークの普及によって都心に近い場所で住まいを購入する、という需要は減退しつつある。今後は今までのようには売れなくなる可能性が高い。

 2013年に始まったアベノミクスと異次元金融緩和により、都心やその周辺の新築物件は半ば金融商品化した。特に規模の大きなタワーマンションは、金融化の度合いが強かった。総戸数の半分程度が、値上がり狙いや賃貸運用を目的として購入されたケースもある。

 金融商品化の度合いが強いほど、市場での流通量も多くなる。つまり、短期間に多くの売り物件が発生する可能性を秘めている。

 オフィスの空室率上昇が巡り巡ってマンション市場での価格下落圧力となり、さらには暴落へのトリガーとなる悪夢のようなシナリオが、現時点で静かに進行しているのかもしれない。今後に向けての要注意点だ。

 ■榊淳司(さかき・あつし) 住宅ジャーナリスト。同志社大法学部および慶応大文学部卒。不動産の広告・販売戦略立案・評論の現場に30年以上携わる(www.sakakiatsushi.com)。著書に「マンションは日本人を幸せにするか」(集英社新書)など多数。

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