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» 2020年11月26日 07時00分 公開

「3密」可視化せよ CO2、湿度、混雑率……広がる数値活用「普段と比べる目安に」

新型コロナの感染拡大が続く中、3密対策の効果を可視化する取り組みが広がり始めている。空港や駅では二酸化炭素濃度や湿度、気温などの数値を感染対策に活用している。

[産経新聞]
産経新聞

 新型コロナウイルスの感染拡大が続く中、集団感染を招きやすいとされる3密(密閉、密集、密接)対策の効果を可視化する取り組みが広がり始めている。冬場は換気だけでなく湿度、温度などの要素を適度に保つ必要があり、夏場に比べて対策は難しさを増している。専門家は「可視化することで、それぞれの実情に合わせたよりきめ細かな対策が可能になる」と指摘する。(荒船清太)

photo 南紀白浜空港では密室度や密集度を二酸化炭素濃度や騒音値を使って可視化し、旅行客に表示している=7月、和歌山県白浜町(ウフル提供)

安心を提供

 和歌山県白浜町にある南紀白浜空港の搭乗口前の待合室のディスプレイには、騒音や二酸化炭素濃度など、普段は見慣れない数値が色付きで並んでいる。いずれも、3密を可視化する数値だ。運営する南紀白浜エアポートは「ご利用される皆さまならびに従業員へ少しでも安心をご提供することができれば」とする。

 可視化システムを開発したシステム会社「ウフル」(東京都港区)によると、二酸化炭素濃度が示すのは、「密閉」の度合いだ。人間は酸素を吸って二酸化炭素を吐くため、密閉空間ではだんだん酸素が減って二酸化炭素が増えていく。その性質を利用し、二酸化炭素濃度の増減で換気の傾向が分かるわけだ。

 近距離での会話などを示す「密接」は、周囲の騒音レベルで把握。人感センサーによって、一定空間にどれだけ「密集」しているかも表示する。

 ウフルでは場所によって普段の平均値を測定。普段より高ければ赤、低ければ青に表示するなど、利用者の視覚に訴える設計にしている。レストランやジム、理髪店などでも試用が始まっているという。

駅の予報も

 すでになじみのある数値の中にも、新たな意味が見いだされ始めたものもある。

 筆頭は湿度だ。政府の新型コロナ分科会も、感染防止対策の一つとして「40%以上を目安」とした換気をしながらの加湿を推奨している。

 理化学研究所は、スーパーコンピュータ「富岳」を用いて、せき込んだときの飛沫(ひまつ)が1.8m離れた正面の人にどれだけ届くかを計算。空気が乾燥していれば飛沫のエアロゾル(浮遊微粒子)化が急速に進み、湿度が30%以下になると、届く飛沫は60〜90%のときの2倍以上に増えることが分かっている。

 一方、時間帯によって不特定多数の利用者の密集度合いが変わる鉄道会社などでは、これまで主に不快感を避けるために利用されてきた「混雑率」の再活用が進む。

 JR東日本では、アプリで首都圏の各列車の混雑状況をリアルタイムで配信。広報担当者は「ソーシャルディスタンスを確保したいというお客さまのニーズを踏まえた」と説明する。

 乗り換え案内サービスなどを展開する「ナビタイムジャパン」(港区)では、過去の検索情報の分析をもとにした列車や駅の混雑状況の「予報」を始めるなど、さらに踏み込んだ対策を打ち出している。

室温も注意

 活用が進むさまざまな指標だが、数値の悪化と新型コロナの感染確率との厳密な相関関係は、いまだに解明されていない。

 建築物の環境に詳しい札幌市立大の斉藤雅也教授(建築環境学)は「絶対的な数値にとらわれず、普段の数値との違いを比べる目安にすべきだ」と指摘する。特に冬場は、換気のし過ぎで室温が18度以下まで低下するとコロナとは別に体調に変調を来たすことも多くなるといい「換気だけにとらわれないことも大事」という。

 二酸化炭素濃度や温度などを可視化する動きについて、斉藤教授は「次の展開が読める室内環境予知能力のようなスキルを高める機会にしてほしい」と話している。

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