ITmedia NEWS >
ニュース
» 2020年11月27日 07時00分 公開

料金値下げ対応「取りあえず静観」 ドコモ子会社化を警戒 KDDI社長

KDDIの高橋誠社長は、武田良太総務相が20日の閣議後会見で携帯電話大手にさらなる料金値下げ対応を迫ったことに「とりあえず静観する」考えを示した。総務省が推進中の携帯事業者間の乗り換え促進策に「矛盾している」と指摘した。

[産経新聞]
産経新聞

 KDDI(au)の高橋誠社長は25日、産経新聞のインタビューに応じ、武田良太総務相が20日の閣議後会見で携帯電話大手にさらなる料金値下げ対応を迫ったことに「取りあえず静観する」考えを示した。総務省が推進中の携帯事業者間の乗り換え促進策に「矛盾している」と指摘した。

photo インタビューに応じるKDDIの高橋誠社長=25日午後、東京都千代田区

 KDDIとソフトバンクは政府の要請を受け、10月末に格安ブランドで低料金プランを導入して対応すると発表。武田氏は当初、一定の評価をしてきたが、先週に突如「多くの方が契約する主力ブランドでは新プランが発表されておらず問題だ」「羊頭狗肉」などと強い言葉で批判した。

 総務省は乗り換え手続きの簡素化や費用の低廉化など大手から格安ブランドや格安携帯事業者に移行しやすい環境を整備中だが、武田氏の発言で利用者が「大手の主力ブランドの値下げが実現される」と考えれば移行は起こりにくい。高橋氏は「議論が飛んでおり、さすがに、はい、分かりましたとはならない」と反発した。

 ただ、NTTドコモが12月に政府要請に対応する値下げを発表するとみられており、「競争力のあるものだったら当然闘う。ドコモ次第」と主力ブランドの値下げにも含みを持たせた。

 一方、NTTによるドコモの子会社化を巡っては「競争政策と真逆の独占回帰が起こることに違和感を覚える」と批判。12月3日に総務省の有識者会議で公正な競争環境確保に向けた議論が行われる予定だが、高橋氏も会合に参加し「通信各社が利用するNTT東日本・西日本の光ファイバー設備のフェアな利用条件なども提案する」方針を明らかにした。

 第5世代(5G)移動通信システムの基地局をつなぐ光回線の重要性は高まっており、NTTの完全子会社となるドコモとNTT東西の経営が一体化して、他社が5Gで太刀打ちできなくなることへの懸念は強い。この点に関する高橋氏との主なやりとりは次の通り。

 ――NTTによるドコモの完全子会社化の問題点を

 「元国営で通信市場で圧倒的なNTTの支配力を抑えるため、NTTグループには基本的には分離分割の方針があり、1992年に分社化したドコモも66%の出資比率を下げていく方向性だった。それが何の議論もなしに環境が変化したという言葉だけで100%子会社にするというのはないだろうと思ったし、TOB(株式公開買い付け)には正直言って驚いた」

 ――実務的に競争が不利になる可能性はあるのか

 「通信各社のボトルネックとなる光回線設備が問題になっている。NTT東西は特定の事業者を優先的に扱うことは禁じられ、ドコモだけ優遇することはないとしても公正競争には疑問が残る。例えば、NTT東西が光回線の利用料金を高くして、ドコモで損が出たとしても競合事業者を排除できるので、グループとしての利益を最大化するようなことが当たり前に起こるのだと思う」

 ――光回線設備の利用で公平性を確保するには

 「オープンに開放して通信各社がフェアに使えるように条件を明確にすることが大事だ。かつて議論されたこともあるが、NTT東西から設備を切り離して資本上も分離するという案がある。分離した先には通信各社が出資したり、ファンドにして幅広く資金を募るなどいろいろな手が考えられる」

 ――完全子会社化に待ったをかけるKDDIなどの動きに、NTTの国際競争力強化を阻害する動きとの批判も出ているが

 「NTTが国際競争力をつけることに違和感はないが、民間活力をうまく使った方がよいというのがもともとの競争政策だ。通信各社が競争しながら付加価値のある産業をつくり、海外に展開できるようになった方がよい。NTTグループの独占回帰を日本の国力回復とするのは危うい気がする。GAFA対抗とも言うが、NTTだけでGAFAに対抗することができるかも疑問に思う」

 ――政府はNTTのドコモ完全子会社化を容認しており、KDDIなどの主張が受け入れられるのは難しいのではないか

 「そう簡単にはいかないと思うが、勝ち取れないにしても光回線設備の運用をこれまで以上に明確にできたり、あるいはコストを安くしていけるかなども含めて、主張していく価値はあると思う。ここ数年は携帯電話料金を安くしろという議論が多かったが、光回線といった固定回線の低廉化という話は聞かなくなったので、そこにもう一回、光を当てるという意味でもプラスだろう」

 ――国際競争力という観点では5Gでも日本の出遅れが指摘されている

 「日本は産業に付加価値を付けるのがすごく下手といわれており、5Gがまさにその典型だ。政府にはある程度落ち着いてもらって、携帯料金の話はいったん、ここまでにして5Gの投資促進に力を入れてほしい。IoTで産業に付加価値を付けて基盤とし、それが国際競争力になるというシナリオの方が日本にとってよいと思う」(聞き手 万福博之)

copyright (c) Sankei Digital All rights reserved.