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» 2020年12月04日 07時00分 公開

発売前の新曲はラジコでチェック ラジオの可能性は

ラジオは最近の巣ごもり生活、在宅勤務の広がりで再評価されている。これまではリスナーの人口が把握し切れていなかったが、詳細な調査も始まり、リスナーの聴き方や広告効果の測定などもできるようになってきている。

[産経新聞]
産経新聞

 ラジオの長所は家事や勉強、仕事中の「ながら聴き」ができること。最近の巣ごもり生活、在宅勤務の広がりで再評価され、何となくスイッチを入れる人は増えているようだ。そんな中、積極的にラジオを選ぶファンもいる。番組出演者の個性が際立つ構成や、想像力を呼び覚ます演出を評価しているのだ。一方、2020年から、毎日流れるラジオ番組が、どれだけの人に聴かれているのかについて、詳しい調査も始まった。リスナーの聴き方を把握することが、ラジオの未来を切り開くためには必要になってくる。  (粂博之)

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聴く前に検索して楽しむ

 好きなアーティストの新曲が発売前にラジオ放送で解禁されると、まずTwitterで検索。すると、どの番組で流れていたかという情報をファンの誰かが拡散しているのに行き当たる。それを基に、番組を放送後1週間もネット配信しているradikoで聴く――。

 堺市の大学3年生、寺田涼太さん(21)が、最新の音楽をキャッチするまでに踏む手順だ。

 音楽番組はFM放送に多いが「いつも決まって聴くような番組はありません」。聴くかどうかは内容次第。radikoの画面に示される出演者名や楽曲名が参考になる。

 一方、「しゃべり」中心のAM放送にはお気に入りの番組が幾つもある。小学生のころから、お笑い芸人の番組を通してラジオに親しんできた。今聴いているのは、ダイアン、霜降り明星、トータルテンボスといった人気コンビの番組だ。「出演者の多いテレビ番組と違って、2人だけでしゃべっているので持ち味を出し切っていると思う」

 ラジオ受信機の他、radiko、ポッドキャストなども使って好きな時間に耳を傾ける。そんなとき意外と入り込んでしまうのがCMだという。テレビと同じように商品を紹介していても、人の足音や街のざわめきといった状況を説明する音が強調されているため「何を伝えようとしているのか想像させられ、印象に残る」。

リスナー増えたが……

 ただ、こうしたラジオの魅力に触れない人は多い。三菱総合研究所が総務省の委託を受けて19年2〜3月に全国の3100人を対象に実施したアンケートによると「AMラジオ番組を聴いている」は54.3%で、「聴いてない」との差は8.6ポイントだった。

 年代別にみると、「聴いている」は20代と40代がそれぞれ45%台と5割を切っており、最も高かった70代以上でも63.2%だった。

 20年はしかし、変化の兆しがある。メディア調査会社、ビデオリサーチ(東京)によると、首都圏の聴取人数(民放5局の合計)は20年1月に約76万人だったのが、新型コロナウイルス感染拡大で4月には約88万人に急増。その後、80万人前後で推移している。

 それでも、民放関係者は「元の水準に戻る可能性もある」と楽観はしていない。自由に過ごせる「可処分時間」を動画配信サービスなどに奪われる恐れは、強まりこそすれ消えることはない。

想像力で補う情報

 数あるメディアの中から、なぜラジオを選ぶのか。産経新聞社では、読者に意見を募ったところ、安心感や想像力がキーワードとして浮かび上がった。映像メディアと比べると、情報の装飾が少ない分、聴き手が自分で補う余地のあることが好感されている。

 例えば、大阪府高槻市の男性(46)は、物事を際立たせる演出が目立つテレビと比べて「ラジオは安心できる。ニュースも分かりやすい」という。「友人の中にも、ここ数年でテレビを見るよりラジオを聴くことの方が増えたという人はいる」

 同府松原市の男性(76)も、テレビの映像やコメンテーターの解説を「押しつけがましく」感じることがある。また、ラジオで聴く大相撲や野球、サッカーなどのスポーツ中継は「想像力を高められる」といい「認知症の予防になるように思う」とも。

 ラジオの魅力は地味だが色あせてない。動画、音声、文字とあらゆるメディアがネット上で競い合う時代。勝ち残るためには、魅力を保ちながらリスナーの期待の一歩先を行くような仕掛けが必要だ。

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 毎日流れるラジオ番組は実際のところ、どれだけの人に聴かれているのか――。長らくはっきりしなかったが、ビデオリサーチが20年4月、番組をネット配信するradikoの情報を活用して首都圏の聴取状況を取りまとめるサービス「ラジオ365データ」を始めた。関西圏や中京圏でも導入する方向だ。

 ビデオリサーチのラジオ聴取率調査は、首都圏では偶数月に、関西圏などでは6、12月に、それぞれ1週間実施。無作為に抽出した世帯に紙の調査票を配布・回収して集計している。一方、radikoでは随時、番組の聴取状況を把握できる。これらを組み合わせて毎分の聴取率、聴取人口を推計。翌日の午後1時には放送局や広告代理店などに提供する。

 業界では、従来の調査だけでは「ラジオ媒体の価値を示すデータが不足している」ことが課題となっていたという。一方で、聴取率のかさ上げを狙って、調査週間に特別番組やプレゼントキャンペーンなどを集中的に展開する慣習もある。

 データの精度が高まることで、各番組の内容や広告収入に影響する可能性がある。

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