フワちゃん(27)、HIKAKIN(ヒカキン)さん、水溜りボンド……。動画投稿サイト「YouTube」の有名人=YouTuberが、2020年は頻繁にテレビ番組に登場した。逆にとんねるずの石橋貴明さん(59)のように、YouTubeに進出し新しいファンを開拓しているベテランのテレビタレントも。コロナ禍で人々のテレビや動画の視聴時間が増加し、この“相互乗り入れ”が急加速した一年となった。(文化部 三宅令)
今月発表された「現代用語の基礎知識選 2020ユーキャン新語・流行語大賞」に、YouTubeからブレークした「フワちゃん」がトップテン入りした。「ウチのガヤがすみません!」(日本テレビ系)や「グッとラック!」(TBS系)など多くのテレビ番組にレギュラー出演し、自由奔放なキャラクターが人気だ。
また、チャンネル登録者数約430万人の人気YouTuberコンビ「水溜りボンド」は10月から、テレビ神奈川で冠番組「水溜りボンドの○○いくってよ」をスタートしている。
次々とテレビに進出するYouTuberに民放関係者は、「10〜20代のテレビ離れが叫ばれるなか、若年層が多く視聴するYouTubeで活躍する人材には注目している」と話す。
人気YouTuberとして活躍するテレビタレントも20年は増えた。石橋さんはここ数年、テレビ露出が減っていたが、20年6月にYouTubeで動画配信を始めたところ人気に火がついた。チャンネル登録者数は約143万人で、テレビ出演も再び増えている。
江頭2:50さん(55)も20年1月にチャンネルを開設。チャンネル登録者はすでに226万人以上。地上波では見られなかったきわどい芸もありの動画で新たな支持を得ている。
HIKAKINさんら多くの人気YouTuberのマネジメントを手掛ける「UUUM」の市川義典取締役は「すでにテレビとYouTubeの垣根はないのでは」と話す。「テレビタレントやYouTuberといったくくりにはとらわれない。一緒にコンテンツを作っていくことで、世界が広がっていく」という。
もちろん媒体の特性として「テレビは1台対大勢の視聴者、動画は1デバイス対1人の視聴者」(市川取締役)という差異は見逃せない。だからこそ「コンテンツの作り方の違いは考えていきたい」と話す。ここは工夫のしどころでもあり、テレビとYouTubeの両方で活躍しようとするなら、自己表現の使い分けは必須なのかもしれない。
テレビ番組に出演している元タカラジェンヌでYouTuberの彩羽真矢(あやはね・まや)さん(36)。番組レポーターとしては「求められる仕事をきちんとこなしつつ、自分のキャラクターを出す工夫をしている」。一方、動画配信では「身近に感じてもらえるように敬語なしで話すなど、視聴者との(1対1の)コミュニケーションを意識している」と、その違いを説明した。
既存メディアとYouTubeの関係に詳しいネットニュース編集者の中川淳一郎さん(47)は、「テレビ局が人気YouTuberを取り上げるのは、その発信力に期待している面もある」と話す。先の民放関係者が「注目している」のはタレントとしての面白さに加え、この発信力だ。
例えば100万人の動画視聴者がいるYouTuberが番組出演を告知し100万人が見れば、約0.1%の視聴率上昇を見込める。また、YouTuber側にとっても「テレビに出ることで新規ファンの開拓につながる可能性がある」という。
ただ、この相互乗り入れが21年、さらに進むかについては不透明な部分も。テレビタレントがYouTubeに進出しても、成功する人はわずかという厳しい世界だ。また、YouTuberのテレビ出演も、中川さんは「大半のYouTuberはフリーのいわば素人なので、事務所所属のタレントに比べてトラブルや炎上の危険性が高くなる」と指摘。テレビ出演するYouTuberは「テレビの特性を理解して、お茶の間の空気を読める人に限られてくるのでは」と話している。
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