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» 2020年12月22日 07時00分 公開

コロナ休校でゲーム依存 新たな日常、広げた溝

コロナ禍による長期休校が不登校の引き金になるケースが生じている。専門家は「休校が何度も延長されて終わりが見えない状況で、ゲーム依存を深めた子供たちが来院するようになった。ゲーム依存と不登校は悪循環のセットになっている」と話す。

[産経新聞]
産経新聞

 「食事時以外はスマートフォンを手放さないんです」。大阪府内の病院に勤務する川田智子さん(42)=仮名=が小学4年の長男(10)の異変に気付いたのは、新型コロナウイルスの感染拡大で3月に学校が休校になって約2週間後。「ゲームに夢中で。驚きました」と振り返る。

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 休校までゲームと無縁の長男だったが、外出自粛でストレスをためる姿にスマホを取り上げるのはためらわれ、1日30分のルールを決めた。だが実際は、両親が仕事で不在の日中、ゲーム漬けになっていた。「やめようと思うけど、気づいたら何時間もたっている」と長男は弁解した。

 学校が再開すれば元に戻る、と川田さんは思っていた。だが長男は2、3回登校しただけで行かなくなった。「感染が怖いのもあるけど、家でゲームをしている方が楽しいと考えているから」とため息をつく。

 関西在住の中学1年の男子生徒(13)も休校中に人気のバトルゲーム「フォートナイト」にはまり、1日最長10時間没頭した。友達が多く、部活でも活躍する男子生徒はコロナ禍まで欠席したことがなかったのに、小学校の卒業式にも出ず、現在も週に1〜3日休む。「ゲームで生活のリズムが乱れ、休むことに抵抗がなくなってしまった」と母親(46)は嘆く。

 「コロナがなければ」。2人の母親は同じ言葉を口にした。

悪循環のセット

 コロナ禍による長期休校が、不登校の引き金になるケースが生じている。その一つがゲーム依存だ。

 長年治療に携わる神戸大病院の曽良一郎教授(精神薬理学)は「休校が何度も延長されて終わりが見えない状況で、ゲーム依存を深めた子供たちが7月ごろから来院するようになった。ゲーム依存と不登校は悪循環のセットになっている」と話す。

 依存の深刻化は国内で初めてネット依存の専門的診療を始めた久里浜医療センター(神奈川県)の調査でも明らかだ。12〜18歳の患者52人に、休校前の2月と休校中・再開直後の5〜6月にオンラインゲームやインターネットの平日1日当たりの使用時間を聞き取った結果、平均でそれぞれ2時間、3時間増えていた。

 とりわけ小中学生を虜にしているのが「フォートナイト」や「荒野行動」といったオンライン対戦型ゲームだ。ネットでつながった仲間と課題をこなす達成感があり、「ゲームの世界が子供たちの居心地の良い居場所になっている」と同センターの樋口進院長。小学生の外来予約が増え、休校を機にゲーム依存に陥ったケースが見受けられるという。「子供たちも『こんな生活はよくない、学校に行って勉強すべきだ』と思っているが、ゲームの魅力が強くて登校の足を引っ張っている」と指摘する。

 2019年5月、世界保健機関(WHO)はゲーム障害を疾病と認定したが、新しい依存症だけに教育現場の捉え方には温度差も。保護者に注意を促す文書を配布する学校もあるが、「家庭内のゲームまで関知しようがない」(大阪市内の小学校長)と突き放す学校も多く、家庭と学校の相互不信の一因にもなっている。

中1ギャップも

 長期休校が年度をまたいだことで、学習環境の変化になじめない「中1ギャップ」が強調され、不登校になった例もある。

 大阪府内の公立中学に今春進学した田中麻美さん(13)=仮名=は、クラスに同じ小学校の生徒がほとんどいなかった。不安の中で6月の分散登校を迎えたが、交流できる時間が少なく友達の輪に入りそびれ孤立状態に。教科担任制にも戸惑い、複数の教師の威圧的な態度に萎縮。「学校が怖い」と涙が止まらなくなった。「学校も先生も休校の遅れを取り戻すのに必死で、生徒に目を配る余裕がない」と母親。学校に相談しても状況は変わらず、田中さんは2学期から登校できなくなった。

 「中学生活をきちんとスタートしたかったのに、休校から分散登校と区切りなく始まり、いつの間にか学校に居場所がなくなった。リセットの機会がほしい」と田中さんは訴えた。

 新型コロナによって学校生活の歯車が狂い、不登校になった子供たちをどう支えるのか。収束が見通せないコロナと同様、学校も家庭も手探りの状態が続く。


 子供が学校に通えなくなったとき、学校と家庭の連携は欠かせないが、ときに大きくすれ違う。不登校を巡る学校と家庭の関係を考える。

 ゲーム障害:PCやスマートフォンなどでオンラインゲームをしたいという衝動が抑えられず、日常生活よりゲームを優先してしまう依存症。学力や体力の低下、慢性的な睡眠障害や視力障害などを引き起こすとされる。19年5月にWHOが疾病と認定し、症状が少なくとも12カ月続く場合に診断できるとした。ゲームを楽しむ人の2〜3%が該当すると推測されている。

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