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» 2021年01月07日 07時00分 公開

「機械=冷たい」変わるか 体温再現、涙流す犬型ロボット

機械に「感情がない」「冷たい」といったイメージを持つ人は多い。そんな中、山形大は犬型ロボット「ゲルハチロイド」を開発。ヒーターを内蔵して体温を再現したり、涙を流せるよう眼球をゲル素材で作ったりと、細部へのこだわりを見せている。

[産経新聞]
産経新聞

 「感情がない」「冷たい」。機械にそんなイメージを持つ人は多い。だが、柔らかくて温かく、ときに涙を流す機械があれば、どんな印象を抱くだろうか。新型コロナウイルスの感染拡大で人と人との接触が敬遠される中、ロボットに期待される役割が変わるかもしれない。

photo 柔らかい素材でつくったゲルハチロイド(山形大提供)

 山形大が2020年10月に開発を公表した犬型ロボット「ゲルハチロイド」。お座りの状態で高さは53cm。秋田犬をモデルにしており、本物らしさを追い求めた細部へのこだわりが特徴だ。

 3Dプリンタで作製した骨格をシリコーンで覆って柔らかい触り心地を、中に入れたヒーターで40度ほどの「体温」を再現。眼球は水分を取り込んだゲル素材で作り、「涙」を流すこともある。鼻からはリラックス効果のある香りも出るという。

 機械には本来、与えられた明確な役割があり、それを狂いなく実行することが仕事だ。しかし、柔らかくて人間に近い素材のロボット実現を目指すこのプロジェクトは、趣旨が異なる。ロボットがいかに人間のいやしとなり、コミュニケーションの潤滑油となれるかを重視しているためだ。

社会情勢踏まえ進化

 最新のゲルハチロイドは3代目。社会情勢を踏まえ、少しずつ進化を遂げてきた。

 初代は19年9月の展示会で披露された。柔らかい素材は体の一部だけだったが、センサーやカメラを搭載し、触れた人の情報を人工知能(AI)で分析できた。相手の感情に応じ、振動や光で「返事」もした。20年9月に登場した2代目はコロナ禍を反映して首に温度測定器をぶら下げ、のぞくだけで体温が測れる機能が目玉だ。

photo ゲルハチロイドの主な特徴

 今後、触った人の汗や肌を分析し、気軽に健康チェックができる機能を付け加える構想もある。ゲルハチロイドが人の共感を呼ぶには何が必要なのか。今後、最新テクノロジーを紹介する日本科学未来館(東京)などで展示し、実証実験で方向性を探っていく。

大阪万博出展も視野

 少子高齢化が進めば勤労世代は減少し、ロボットやAIの活用が課題となる。

 10〜20年後に向けたビジョンを示した総務省の「未来をつかむTECH戦略」(18年公表)は、幅広い分野での自動化や無人化に言及し、ロボットやAIなどとの共生社会の構築を掲げる。その上で、「悲観からは何も生まれない」として、明るい未来の共有や実行も求めた。

 老いていく日本社会が、どうロボットと向き合っていくのか。やはりロボットは絆やぬくもりと無縁なのか。将来を模索する上で、ゲルハチロイドを巡る取り組みは試金石となる。

 研究を統括する山形大の古川英光教授は話す。「柔らかいロボットが人の生活や幸せにどれだけ貢献できるのか。その可能性を世界に発信したい」

 4年後に迫った2025年大阪・関西万博での出展も視野に入れる。人間とロボットとの良好な関係の模索は緒に就いたばかりだ。(野々山暢)

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