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» 2021年01月27日 09時00分 公開

ギアかみ合わない政府と自動車業界 寒波で電力供給の脆弱さ露呈もEV推進

2030年代半ばのガソリン車禁止を掲げる政府だが、EVには膨大な電力が必要だ。トヨタの豊田章男社長は「エネルギー政策の大変革なしにはできない」と懸念を示した。

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 冬の寒波で、国内の電力供給の脆弱(ぜいじゃく)さを露呈するなか、日本経済を支える自動車産業も岐路に立たされている。政府は2030年代半ばのガソリン車禁止、50年に温室効果ガスの実質ゼロを掲げるが、電気自動車(EV)には莫大(ばくだい)な電力が必要だ。米国や中国メーカーもEVで急成長し、異業種も参入に意欲をみせるが、日本は官民のギアがかみ合っていないようにみえる。

photo 中国大手「比亜迪(BYD)」のEV車

 日本自動車工業会(自工会)の豊田章男会長(トヨタ自動車社長)は20年12月、政府目標について「エネルギー政策の大変革なしにはできない」と懸念を示した。21年1月の年頭メッセージでは「実現に向けて全力でチャレンジしたい」としたうえで、「全ての自動車が電動車になればいいという単純な話ではない。その自動車を生産するために使われる電気を作るときに出る二酸化炭素の量を減らすことが重要になる」と指摘した。

 自動車ジャーナリストの佐藤篤司氏は「10年あればトヨタが全ラインアップをEVにすることは可能だが、問題は電力供給だ。簡単に電力需給が逼迫(ひっぱく)する日本が、技術的なインフラが整わないままにEVを普及させることはできない。EVを“善”として期限を設けることに現場が首をかしげることも理解できる」と解説する。

 現在、寒波の影響で全国的に電力需給が逼迫しており、電力各社は火力発電の燃料となる液化天然ガス(LNG)の確保を急いでいる。

 1時間程度でフル充電可能で、災害時には一般家庭の数日分の電力を供給できるEVだが、「その分、急激にエネルギーが必要になる」と佐藤氏。EVが普及した上で寒波が来れば、庶民の足が奪われることになる。

 自工会によれば、19年時点で自動車関連産業の就業人口は、約546万人で全就業人口の約8.2%。主要商品別輸出額約76兆9300億円のうち、自動車の輸出が占める割合は20.7%という巨大産業だ。

 日本で官民がかみ合わない間に、米EV大手Teslaの株式時価総額は世界の自動車業界でトップに立った。中国の上海汽車集団は、欧州で自主ブランドで販売する約4万台のうち、新エネルギー車が6割を占める。

 異業種では米AppleがEV市場参入に向け、韓国の現代(Hyundai)自動車と交渉に入っていると報じられ、中国検索大手のBaiduは参入を表明した。

 日本は今後も目まぐるしく変化する自動車業界をけん引できるのか。前出の佐藤氏は「車は人の命が預けられるため、何十年にも渡って相当高度な安全性が追及されてきた。そのため、新興企業が既存メーカーに取って代わるとは考えにくい。欧米にも電力供給の問題があり、日本が30年代に現在の地位を失うことはないだろう」と予測した。

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