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» 2021年01月28日 09時00分 公開

学校現場のICT化、コロナ禍で加速も実現に高いハードル

26日の中央教育審議会の提言では、ICTを駆使した指導の必要性が示された。コロナ禍の一斉休校の教訓から学校現場のICT化の動きは加速しているが、教員のさらなる労働強化に拍車をかける可能性もあり、実現には高いハードルが待ち受けている。

[産経新聞]
産経新聞

 26日に答申された中央教育審議会の提言では、ICT(情報通信技術)を駆使した「少人数のきめ細かな指導」の必要性が示され、その担い手となる教員像が描き出された。新型コロナウイルス禍の一斉休校の教訓から、学校現場のICT化の動きは加速。オンライン授業やデジタル教科書の活用が求められるが、多忙な教員のさらなる労働強化に拍車を掛ける可能性もあり、実現には高いハードルが待ち受けている。

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 「授業での端末活用には相当の懸念がある。不慣れな先生でも混乱なく使っていけるだろうか……」

 東京23区のある教育委員会幹部は不安を語る。この区では100校以上ある全小中学校で3月末までに、児童生徒1人1台の学習用端末配布が完了する。その後、約1カ月間を機器の調整や使い方の習熟に充て、5月以降から授業での活用を始める予定だという。

 学校向けの書面には、不慣れな教員を念頭に電源の入れ方やパスワード管理方法といった初歩的な内容を手厚く記載するという。

 「これからの学校教育を支える基盤的なツールとしてもはや必要不可欠」。答申では、教員によるICT活用をこう断言する。

 2020年春の一斉休校では、公立校のオンライン授業が十分に進まず、各地の感染状況に伴う授業の進捗(しんちょく)具合が大きな問題となった。学校現場の危機感が、「ICT化の追い風となった」との指摘は大きい。

 20年度以降の全面実施となる新学習指導要領では、子供一人一人に合わせた丁寧な指導が重視される。「35人学級」など少人数教育拡充はその一環となり、中教審はオンライン授業やデジタル教科書をその中心的ツールと位置付ける。

 例えば、端末を効果的に使えば、英語の授業で海外の子供と交流したり、理科の授業で分子構造をシミュレーション動画で学んだりすることも可能となる。外国人や障害のある児童生徒の支援にも役立つ他、収集した子供の学習データを解析して数値などに可視化すれば、教員は一人一人の子供に合わせたより丁寧な指導につなげられる。

 ただ、学校現場からは不安の声も上がる。首都圏の公立小の女性教諭(37)は「ICTを使って挑戦したい授業はたくさんあるが、授業以外の校務に追われる中で準備が十分に行えるかどうか」と話す。

 教員志望者が減る中、教員の質の低下も課題となる。答申では、教職を「創造的で魅力ある仕事」と強調し、働き方改革の加速や情報発信の強化を求めた。

 千葉大教育学部教授で同学部付属中校長の藤川大祐氏は「コロナ禍で多忙感が高まる中、教員の士気向上や教員志望者を確保するためにも、まずは実効力のある職場環境の改善が必要で、それなしにはICT活用の効果は十分に発揮できないだろう」と指摘した。

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