自宅にいながらさまざまな体験ができるオンラインサービスで、現実感を演出しようという商品が続々と登場している。訪れる場所の名産を味わいながら参加するオンラインツアー、講師の解説映像を見ながら実際にそば打ちをする講座など、見る以外の体験も提供。映像とリアル体験のハイブリッドが進む。(田村慶子)
「今回は特別にアッサンブラージュ(混ぜ合わせ)したお酒をご用意しました」。日本酒「月の桂」で知られる酒蔵、増田徳兵衛商店(京都市伏見区)から当主が語りかけた。1月末、阪急交通社が行ったオンラインツアー(1人5000円)。参加者は日本酒の作り方などの説明を受け、酒蔵のライブ映像とともに、自宅に届いた月の桂や京都の老舗料亭のおつまみなどを楽しんだ。
「リアル以上の体験ができるオンラインツアーにすっかりはまった」。参加した東京都内の男性(62)は声を弾ませた。
従来のオンラインツアーでは、映像を介したガイドの現地紹介が中心。「味や香り、手で触れた感覚のない旅はどこか味気ない」との声もあり、体験型の要素も取り入れた。
阪急交通社は「各地の歴史や文化を体験するのが旅行。オンラインだからこそ、特徴を際立たせることもできる」と話す。次回は高知県で酒蔵ツアーを行う予定だ。
コロナで見学を取りやめている企業施設でも、オンラインの活用が進む。
サントリースピリッツは山崎(大阪府島本町)、白州(山梨県北杜市)の2つの蒸留所を自宅などから見学できる有料(1人3000円、税別)のリモートツアーを6日に始めた。
事前に届くウイスキーと特製グラスでテイスティングを楽しみ、ビデオ会議アプリ「Zoom」のチャット機能で質問もできる。2月は2蒸留所で16回を予定するが、計1600人分がすぐに完売。蒸留所見学は2020年2月から休止しているが、根強いファンがいることを裏付けた。
担当者は「オンラインだからこそできる新たな蒸留所の体験を通じ、未来のウイスキーファンを作りたい」と意気込む。
オンラインの学習講座も実体験を充実させる。ホビーズ(大阪市天王寺区)が20年12月から始めたのは、Zoomでそば打ちや薫製づくりなどの趣味を学ぶ講座だ。
Zoomで講師とやりとりしながら、自宅で本格的なそば打ちなどを体験できる。食材の他、必要な器具もレンタル品として自宅に送られてくるため気軽に参加できる。料金は9800円から。利用者からは「リアルの教室と遜色なく、分かりやすい。自宅でできると安心でコロナ時代にマッチしている」との声があるという。
家電量販店、エディオンの子会社で、子供向けプログラミング教室を展開する「夢見る」(堺市)も、コロナ禍で教室へ通いづらい生徒に向け、自宅でロボット製作を学べる新サービス「つくロボ」を強化している。
レゴブロックを使い、デジタルガイドに沿ってパーツを組み立て、ロボットの仕組みなどを学ぶ。オンラインで発表会を開き、各地の教室で学ぶ生徒たちに完成品を披露したり、意見交換したりする仕組みも取り入れ、好評という。
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