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» 2021年02月12日 10時00分 公開

存在感増す中国ByteDance 統制強化で大手牽制、IT市場に変化

中国IT業界で、ByteDanceの存在感が増している。中国政府が独占禁止法の強化でTencent、Baidu、Alibabaなどの巨大企業に制限を掛けようとしている中、ByteDanceはTencentに対して訴訟を起こすなど働きかけている。

[SankeiBiz]
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 2021年の春節(旧正月)は12日。中国は既に年越しモードに入っている。21年もやや緊張感に満ちた春節となりそうで、新型コロナウイルス感染防止のために政府は「現在生活している地での年越し(帰省の自粛)」を呼び掛けている。本来は実家に帰ってCCTV(国営中央テレビ)の春節聯歓晩会(日本の紅白+かくし芸大会のような年越しバラエティー番組)を見るというのが習慣だったが、21年はお預けとなりそうだ。

photo ※画像はイメージです(Getty Images)

 中国の年越し名物・春節聯歓晩会は近年、外部アプリと提携し「紅包(お年玉)」をインターネット上で配るのが習慣となっているが、その提携アプリが交代した。ここ2年ほどEC(電子商取引)アプリ「●多多(Pinduoduo、●=てへんに并)」が担っていたが、21年は「抖音(Douyin)」。日本ではTikTokとして知られる短尺動画アプリの中国本家版である。11日の大みそかから春節まで、番組中に抖音を通じて総額12億元(約198億円)ものお年玉が視聴者にばらまかれることになる。

 この抖音を運営する北京字節跳動科技(ByteDance)は、中国のIT業界で攻勢を強めている。先日は中国IT大手の「騰訊(Tencent)」を訴えたというニュースが流れた。Tencentといえば「百度(Baidu)」「阿里巴巴(Alibaba)」と並ぶ3巨頭といわれる企業である。それに対して新興勢力であるByteDanceは、Tencentが市場の支配的地位を乱用し、正当な市場競争を阻害、抖音の権利を侵害しているとして反壟断法(独占禁止法)違反で訴え、公式メディア上での謝罪と賠償金9000万元を請求したのである。

 現在、1日10億人超が使用している微信(WeChat)には、チャット機能や「モーメンツ」という機能などのコンテンツが備わっているが、そこでは抖音のコンテンツを共有することができない。Tencent側が抖音を締め出しているのである。

 今回のByteDanceの訴えは、Tencentが構築した通信、娯楽、流通そして決済など金融まで広がったオンラインネットワークを「市場の支配的立場にある」とし、その一部開放を求めたわけだ。

 この一件が注目に値するのは、中国政府が独禁法をもって巨大化した中国企業、特にAlibabaなどのIT企業の動きを制限しようとしているからである。その象徴といえるのが20年のAlibabaグループの金融会社アント・フィナンシャルの上場中止やAlibabaに対する立ち入り調査などの動きである。

 また、党中央と国務院から今後の経済成長方針が1日出されたが、その中には「独禁法の適用を厳格化し、公平な市場競争環境をつくる」ことが盛り込まれている。中国政府としてはAlibaba、Tencentを牽制(けんせい)する存在として、抖音やByteDanceの成長を促したいところだろう。

 21年の春節番組との提携によってByteDanceの金融業務にも自然と勢いがつくことが考えられる。人気のライブコマースにおいても、20年の「W11(独身の日商戦)」でまずまずの成績を得ており、さらには抖音上のライブコマースからAlibaba系列ECへの動線を打ち切るなど、独自路線を構築する体制が整いつつある。21年、中国IT企業の勢力図に起こる変化は、中国市場開拓を図る日本企業のマーケティング活動にも影響する。ぜひ注視したいところである。

【プロフィール】森下智史 もりした・さとし 中国トレンドExpress編集長。2015年まで17年間、中国・上海に滞在。上海では在留邦人向けのフリーペーパーの編集・ライター、産業調査などに従事。帰国後の18年に日中間の越境EC支援会社トレンドExpressに入社し、現職。

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