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» 2021年02月22日 07時00分 公開

IOC注目「バーチャルスポーツ」……有馬温泉で仮想ロードレースも

コロナ禍の中、eスポーツに現実的な身体運動の要素を加えた「バーチャルスポーツ」が注目されている。国際オリンピック委員会も「五輪プログラムへの追加を検討する」との提言を発表した。

[産経新聞]
産経新聞

 コロナ禍の中、eスポーツに現実的な身体運動の要素を加えた「バーチャルスポーツ」(VS)が注目されている。仮想空間で自転車のロードレースを戦う大会なども各地で開催。国際オリンピック委員会(IOC)は15日、「五輪プログラムへの追加を検討する」との提言を発表した。AR(拡張現実)を活用して地域振興に結び付ける動きもあり、流通科学大学の山口志郎准教授は「現実と仮想の融合が進んでいる」と話している。

photo 「有馬-六甲バーチャルライドレース」の様子。オンラインの参加者も多かった(金井庸泰さん提供)

仮想空間だから楽しめる

 コロナ感染が比較的穏やかだった2020年7月、有馬温泉(神戸市北区)のスポーツバーで開かれた「有馬-六甲バーチャルライドレース」。チェコで開発されたバーチャルサイクリングアプリ「ROUVY」を使い、eスポーツプレーヤーやプロのサイクリストらが、有馬温泉を出発して山頂を目指す仮想空間のルートを、スマートトレーナーなどで走破した。

 スマートトレーナーとは、PCやスマートフォンなどと接続できるローラー台のこと。これにスポーツ仕様の自転車を設置することで、屋内でバーチャルなロードレースを楽しめる。ROUVYなどのアプリと連動させれば、勾配によるペダルの重さや、自転車自体の傾きも再現できる。

 ROUVYの特徴は、画面に表示される仮想空間のルートがAR化した実写映像で、現実のレースに近い感覚を得られること。有馬-六甲バーチャルライドレースで使用したルートは、日本初の公式コースと認定され、大会自体もアジア初の公式イベントだった。

photo 選手が見る画面にはリアルな映像が映し出された(金井庸泰さん提供)

 大会にはスポーツバーで自転車をこいだeスポーツプレーヤーやプロのサイクリストに、オンラインでの競技者も含めて計113人が出場。ニュージーランドやイタリアなど海外からの参加者も約60人いた。実行委員を務めた兵庫県eスポーツ連合副会長の金井庸泰さんは「バーチャルだからこそ、体験できるタイミングがある。コロナ禍もそう。落車の危険がなく、初心者でも楽しめる」と話す。アドバイザーの山口准教授は「参加型イベントが中止や延期となる中、仮想世界でリアルなフィジカルスポーツを行うのがニューノーマルになりつつある」と解説した。

温泉対抗レースも計画

 そもそも、有馬温泉でのバーチャルライドレースは、六甲山頂にかけての起伏に富んだコースを楽しむ愛好家が多いことから、サイクルツーリズムの推進につなげる目的で企画された。実施時期がコロナ下になったが、海外を含めてオンラインでの参加者が多く、開催にこぎつけた。

 大会後に山口准教授が実施したアンケートでは、回答者全員が「楽しかった」「満足している」と答えた。「次回も参加したい」との回答が8割を超え、「実際のコースに挑戦したい」も7割を上回った。感想を自由に書き込む欄では「自動車が止まっていたり、おじさんが自転車を押していたりして、リアルだった」といった反応もあり、金井さんは「バーチャルなコースを走ることで、実際に訪れてみたいと思ってもらえれば……。実際のサイクリングを終えた後に有馬温泉に入って疲れた体を癒やしてもらうことで、地域振興にもつながる」と強調する。今後は常設の大会運営サイト「ツールド有馬」を開設したり、愛好家が集まるプロテインバーを開業したりする他、城崎温泉(兵庫県豊岡市)との温泉対抗バーチャルライドレースも実施したいという。

アットホームスポーツの時代

 こうしたリアルな運動とバーチャルな世界を融合したスポーツ大会を開催する動きは加速している。

 山口准教授のゼミは20年12月に「ワールドマスターズゲームズ2021(WMG2021)関西組織委員会」と「スポーツコミッション関西」が共催した「インターカレッジ・コンペティション」で、WMG2021の自転車競技の舞台となる鳥取県倉吉市でのバーチャルライドレースを提案。サイクルツーリズムの活性化につなげることで、大会のレガシー(遺産)になると訴えた。

 また、20年11〜12月には神戸商工会議所などが中心となって「企業交流運動会」をバーチャルで開催した。14社の約160人が参加。開会式と表彰式をオンラインで実施し、その間の1カ月間に、参加者が各自や企業ごとにスポーツを行う仕組みで、オンラインイベントの際には、全員で運動する機会も設けられた。

 山口准教授は「コロナ禍で、自宅や一人でできるコンテンツが人気を集めている。今後は、いかに横のつながりをつくるかが重要になってくる。参加者同士がオンラインやオフラインで緩くつながり、自分自身が得意な領域で無理なく身体的な運動を行う『アットホームスポーツ』が広まっていくのではないかと思う」と話している。


 「バーチャル(仮想)スポーツ」(VS)

 広義では、1990年代に流行した「Dance Dance Revolution」や任天堂が2007年に発売した「Wii Fit」も該当。IOCは一般的なオンラインゲームとの違いを明確化し、コロナ禍で若者を中心にVS市場が拡大したと指摘している。

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