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» 2021年02月24日 07時00分 公開

「理解助ける」「視力低下」 デジタル教科書、長短ふまえ議論加速

小中学校でのデジタル教科書の本格導入に向けた議論が加速している。背景にはGIGAスクール構想がある。デジタル教科書は、学習内容を理解する助けになるとされる一方、視力低下などの悪影響が不安視され、拙速を懸念する声も根強い。

[産経新聞]
産経新聞

 主に小中学校でのデジタル教科書の本格導入に向けた文部科学省の有識者会議は22日、導入を前提とした5つの方法案を盛り込んだ中間まとめ案をおおむね了承、今後は実証事業を経て検討が進められることになった。ここ最近は議論の速度が増しており、背景には国主導による児童生徒への1人1台の端末配布が3月末にほぼ完了することがある。デジタル教科書は、学習内容を理解する助けになるとされる一方、視力低下などの悪影響が不安視され、拙速を懸念する声も根強い。

photo デジタル教科書の主な利点と課題

 「急ハンドルを切るのではなく、新しいデジタルという教材も入れながら、よりよいどのような教育ができるのかを見て、また方策を考えていきたい」

 これまで萩生田光一文科相は、紙の教科書を評価する声が多いことを認めつつも、デジタル教科書の利用拡大を探っていく考えを繰り返し述べている。

 デジタル教科書を巡っては、2009年以降に政府で検討が本格化。各地で実証事業が進められ、学校教育法の改正で19年4月から従来の補助教材としてではなく、正式に教科書としての活用が可能になった。

 この段階では急激な変化を避けるため、教科ごとに「授業時間数の2分の1未満」とする利用規制も設定され、紙の教科書との併用を義務化。だが、有識者会議で、「規制には明確な根拠がない」などの声を受け、21年度から規制は撤廃される見込みだ。

 背景には全ての小中学生に対し、デジタル教科書の利用に必要な端末を1台ずつ配布する「GIGAスクール構想」の策定があり、配布完了の目標時期が新型コロナウイルスの影響で20年度中に早まったという事情もある。端末活用策の“中身”も急ぎ充実させる必要が出てきたわけだ。

 文科省の調査では20年3月現在で、デジタル教科書の普及率が公立小は7.7%、公立中は9.2%と利用が進まない中、今回の環境整備で一気に状況を打開したいとの狙いがある。

 政府の経済財政諮問会議は20年12月、25年度までにデジタル教科書の普及率100%達成を目標に設定。文科省も21年度からの大規模な実証事業に向け、有償となるデジタル教科書の購入費用22億円を3年度当初予算案に計上した。

 デジタル化のメリットは何か。中間まとめ案では、直接画面に書き込める機能があり、消去や書き直しが簡単なため試行錯誤が容易なこと、グループ学習で書き込んだ内容を見せあって対話的な学びにつなげられることなどを列挙。他に多様なデジタル機材との連携などを含め、効果的な活用法を探っていく考えだ。

 一方、懸念も残る。最も指摘されるのは視力低下といった健康面の影響だ。文科省は利用時間の制限撤廃に伴い、目と端末の距離を約30cm以上離すことなどを留意点として定めた。

 また、15歳を対象とした国際機関による18年調査では、読解力テストの平均点について、日本は、本を「紙で読む方が多い」と答えた子供が「デジタルで読む方が多い」を大幅に上回った。デジタル教科書の使い方によっては、学習効果にマイナスの影響が出る可能性もある。

 著書「ほんとうにいいの?デジタル教科書」がある国立情報学研究所の新井紀子教授は、障害のある子供や外国人の児童生徒らにとって、音声や翻訳の機能が「有用」と一定の意義を認める。ただ一方で「先駆けて『1人1台端末』やデジタル教科書を導入した自治体で、全国学力テストや高校入試実績において統計的に意味のある良好な結果は出ていない。功罪について第三者機関を入れて徹底的に科学的な検証をすべきだ」と訴えている。

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