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» 2021年03月29日 07時00分 公開

漫画の海賊版が再び拡大 サイト相次ぎ被害急増、「漫画村」超す

漫画の海賊版被害が再び拡大している。海賊版サイト「漫画村」が3年前に閉鎖されて以降も、新たな海賊版サイトが次々と誕生。2020年12月の推定被害額は349億円で、1年足らずの間に9倍に急増した。

[産経新聞]
産経新聞

 漫画の海賊版被害が再び拡大している。悪質性が際立っていた海賊版サイト「漫画村」が3年前に閉鎖されて以降も、新たな海賊版サイトが次々と誕生。コロナ禍の2020年12月の推定被害額は349億円で、1年足らずの間に9倍に急増した。対策担当者は「漫画村の最盛期を超える最悪な状況になってしまった」と危機感をあらわにする。(文化部 本間英士)

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アクセス10倍超

 「『漫画村』当時と比べて通信・IT業界などとの連携が深まったし、対策も繰り返し行ってきた。それだけに、これだけ数字が伸びたのはショックでした」

 出版社や通信事業者などで構成される海賊版対策団体「ABJ」の担当者は、こう振り返る。

 ABJは海賊版サイトのアクセス数などを調査。利用者の多い上位3サイトの場合、アクセス数は1年で10倍以上に膨張した=グラフ。計測可能なサイトで「タダ読みされた金額」として推定被害額も算定したところ、20年1月に39億円だった推定被害額は、12月には349億円と急増。年間では2114億円に達するという。

 この数字にはデータを端末に保存して閲覧する「ダウンロード型」サイトは含まれていない。推定総被害額は、コンテンツ海外流通促進機構(CODA)が試算する「漫画村」の推定被害額(3200億円)を間もなく超えるとみられる。

 被害拡大の背景には、コロナ禍で在宅時間が増えたことや、コミック市場の好況などがある。出版科学研究所の調査では、20年のコミック市場規模は前年比23.0%増の6126億円。1978年の統計開始以来、最大となった。海賊版の存在は歴史的好況に冷や水を浴びせる形となっている。

 現在、ABJが把握している海賊版サイトは900ほど。「鬼滅の刃」などの人気作を抱える集英社の場合、1カ月当たり約10万件の削除申請を海賊版サイトや検索サイト、YouTube、Facebookなどに実施している。ただし、「海賊版サイトを20個つぶしても、またすぐに別の20個が現れる」(同社知財担当者)状況が続くなど、出版社も対策に苦慮している。

多い「ベトナム系」

 解決が困難なのは、サイト運営者の特定が難しいためだ。サーバが海外に置かれ匿名性が高いことに加え、そのサーバやドメインも頻繁に変わる。現在多いのは、運営者がベトナムにいるとされる通称「ベトナム系」サイト。日本側も文化庁などを通じて各国政府に協力を呼び掛けているが、それらの国が海賊版による被害を直接受けているわけではないため、反応は鈍いという。

 こうした状況を打開するため、CODAはサイバー知識と倫理観をあわせ持つ「エシカルハッカー」と連携し、運営者の特定につなげる。ABJも悪質サイトをリスト化し、関係団体や企業と情報を共有。検索サイトから海賊版サイトにアクセスしづらくするための取り組みも行う。

 21年1月には改正著作権法が施行され、海賊版と知りながら漫画やイラストなどをダウンロードする行為も新たに違法となった。2月の「ダウンロード型」サイトへのアクセス数は、1月と比べて1割程度落ちたといい、ABJの担当者は「効果は表れ始めている」と期待を寄せる。

「進撃の巨人」も標的

 特に海賊版の標的となりがちな人気漫画。別冊少年マガジン(講談社)で連載され、来月完結する「進撃の巨人」(諫山創著)も被害を受け続けている。

 「海賊版サイトに動画配信サイト、SNS……など多くの場で著作権侵害を受けてきました。雑誌の発売前に海賊版がアップロードされる場合もあります。本当に許せない行為です」

 担当編集者の川窪慎太郎さん=週刊少年マガジン編集部編集次長=は憤りを隠さない。刊行元の講談社は海賊版対策チームを編成。発売前の漏えいルートを調査し、違法アップロードした人の特定を進める。訴訟の準備も行っている。

 その一方で、川窪さんは啓発活動にも努める。別冊少年マガジンの発売数日前、自身のTwitterで、正規版の利用を促す文章を日本語と英語で発信。違法アップロードが従来の半分になるなど、効果を実感しているという。

 川窪さんは「『どうせ逮捕まではいかない』と軽く考える人もいるが、そんなことはない。逮捕も訴訟もありえます。違法アップロードは最低の行動だと思いますし、断固とした対応を取ります」と話している。

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