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» 2021年04月06日 07時00分 公開

歌舞伎俳優・中村獅童 伝統とテクノロジーの融合「超歌舞伎」が開く未来

中村獅童さんは、2016年から毎年開催されてきた公演「超歌舞伎」で座頭を務めてきた。バーチャル・シンガー、初音ミクのデジタル映像と歌舞伎俳優が舞台上で共演しているかのような演出で話題を呼ぶ。

[産経新聞]
産経新聞

 《松竹とドワンゴが共同製作し、NTTの技術を取り入れて、「ニコニコ超会議」(千葉・幕張メッセ)の中で2016年から毎年開催されてきた公演「超歌舞伎」で座頭を務めてきた。バーチャル・シンガー、初音ミクのデジタル映像と歌舞伎俳優が舞台上で共演しているかのような演出で話題を呼ぶ。20年はコロナ禍で観客を動員した公演は中止となったが、21年は4月24、25日に幕張メッセのイベントホールで上演される。演目は新作「御伽草紙戀姿絵」(おとぎぞうしこいのすがたえ)》

photo 初音ミクと共演する舞台は進化を続ける=19年8月、京都・南座 NTT・松竹P/超歌舞伎

 歌舞伎の世界とデジタルの世界をどう融合できるか、が大きなチャレンジでした。最初は芝居の呼吸を合わせるのがものすごく大変で、歌舞伎チームとデジタルチームのスタッフ同士の意思の疎通にも時間がかかりました。

 超歌舞伎では、今まで歌舞伎をほとんど見たことがないサブカルチャー好きの若者たちと触れ合うことができるんですよ。会場では若者がライブコンサートのようにペンライトを振り、大向こうで屋号とかの声を掛けてくるんですけれど、みんな回を重ねるごとにどんどん上手になって、いつの間にかNTTさんにも「電話屋」という屋号まで付いていました。

 舞台はニコニコ動画で生放送され、リアルタイムで書き込まれるコメントが画面上に表示されます。回数を重ねるごとに、初演のときにはなかったことも起きていて、歌舞伎独特の分かりにくい言葉が出てくると、歌舞伎通の方が「これはこういう意味だよ」と教えてくれたりとか、視聴者同士の交流も生まれています。

 最後には一緒に盛り上がって「スタッフさん、ありがとう!」なんて声まで掛けられて、もう出演者もスタッフも一同感動して、幕が閉まったあとは毎回、涙、涙なんです。

 《19年8月、京都・南座で超歌舞伎「今昔饗宴千本桜(はなくらべせんぼんざくら)」が上演された。通常公演に加え、「リミテッドバージョン」として、これまで敵役で人気を博してきた澤村國矢(くにや)(紀伊国屋)が主役を務めた》

 イベントではなく、歌舞伎の興行としては初めてで、しかも南座という歴史ある劇場での上演だったのでとてもうれしかったです。そして座頭として、國矢さんには主役をぜひやってもらいたかったので「リミテッドバージョン」を設けました。國矢さんは一般家庭出身ということもあり、それまで歌舞伎の主役をやるチャンスがなかったんです。

 僕自身、父親がこの業界にはいなかったので苦労しましたが、そんななか、勘九郎の兄さん(のちの十八代目中村勘三郎、12年死去)とかいろいろな方に助けていただき、ご指導いただいた。そういう経験があったので、門弟や若手には「頑張れば歌舞伎でいい役をやれるんだ」という希望を持ってもらいたいという、僕なりのメッセージが込められているんです。

 20年8月には、コロナ禍のため無観客の配信公演をやらせていただきました。南座と同じ演目でしたが、このときは僕が敵役で出演し、主役の忠信(ただのぶ)役は國矢さんと、超歌舞伎では殺陣を作ってくれている門弟の中村獅一(しいち)にお願いしました。最後は僕も早替わりで忠信になり、“三人忠信”で幕を閉じました。約24万人もの方が視聴してくれました。(聞き手 水沼啓子)

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