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» 2021年04月14日 07時00分 公開

NHK予算、2年連続で全会一致承認ならず 放送とネットのビジョン見えず

NHKの予算が、全会一致での国会承認を2年連続で逃した。反対した日本維新の会は、NHKの問題点を「放送と通信の融合に対するビジョンをしっかりと打ち出してこなかった」と指摘する。

[産経新聞]
産経新聞

 NHKの予算が、全会一致での国会承認を2年連続で逃した。近年では、籾井勝人(もみい・かつと)会長時代(2017〜19年)に不祥事が相次ぎ、3年連続で賛成多数での承認となったが、与野党が全会一致で認めるケースが多い。反対した日本共産党と日本維新の会は20年も同じ行動を取った。このうち、維新は20年の通常国会で、放送と通信の融合時代でのNHKのビジョンが見えないことを理由に挙げ、今国会でもNHKの問題点を指摘。NHKにとっては20年に続く厳しい結果となった。(文化部 森本昌彦)

かみ合わぬ質問と回答

 「放送と通信の融合ということがずっと言われてきた。で、あるにもかかわらず、放送と通信の融合に対するビジョンをしっかりと打ち出してこなかった。これは大きな問題だと思う」

photo NHKの外観(三尾郁恵撮影)

 3月30日の参院総務委員会で、柳ケ瀬裕文氏(日本維新の会)はこう述べ、NHKの予算案に反対する意向を表明した。

 その直前、柳ケ瀬氏は 「テレビの保有が10%、20%しかない時代に突入していったときに、NHKは公共放送としての役割をどうやって果たしていくのか。これについてのビジョンを伺いたい」と尋ねた。

 NHKの前田晃伸会長の回答は「NHKは時代の変化に向き合い、いのちと暮らしを守る公共メディアとして、正確、公正・公平で豊かな放送サービスをテレビ、ラジオ、インターネットとあらゆる伝送路を使って届けることが重要だと考えている」という具体性に乏しい内容だった。

 この日の委員会では、自民党の二之湯智(にのゆ・さとし)氏や立憲民主党の小沢雅仁氏、公明党の若松謙維(かねしげ)氏らが質問。業務、受信料、ガバナンス(組織統治)の三位一体改革の進捗状況や東京・渋谷の放送センター建て替え問題、NHKが予定している受信料値下げなどについて質疑が行われ、前田会長らNHKからの出席者は原稿を見ながら答える姿が目立った。

 ところが、柳ケ瀬氏が、NHKが資産として多額の有価証券を保有していることに対する認識を聞いた際には、前田会長が原稿にほとんど目を落とさずに「委員の指摘は良く分からない」と述べ、議論がかみ合わない様子も見られた。

乏しい公共放送の在り方に関する議論

 維新は20年の通常国会でも、NHK予算の承認に反対した。20年3月の参院総務委員会でも柳ケ瀬氏は「公共放送の在り方をもう一度しっかりと仕分けをすること、明確化すること、これがNHKの抜本改革には欠かせないのではないかと考えている」と訴えた。

 20年4月には総務省の有識者検討会に、公共放送の在り方について考える分科会が作られ、議論が重ねられた。その中では「公共放送とは何かということを、きちんと議論しないと国民の皆さんの支持は得られない」という意見も出たが、受信料問題に多くの時間が費やされ、公共放送、公共メディアとしてのNHKの業務範囲に関する話し合いは乏しかった。

 参院に先立つ3月22日にNHK予算に対する質疑が行われた衆院総務委でも、維新はNHKの取り組みの不十分さを指摘した。

 足立康史氏は、20年の委員会での前田会長の発言に言及し、「前田会長は『新しいNHKらしさの追求』というキーワードを自ら提示し、放送と通信の融合時代におけるNHKの姿を盛り込んだ次の中期経営計画の案を私が先頭に立ってまとめると宣言されたが、NHKが公共メディアとしてどのように進化を遂げていくのか、いまだにその片りんも見えない、そんな状況が続いている」と指摘した。

 21年1月に発表した経営計画では、衛星放送やラジオ放送のチャンネル削減の方針を打ち出し、インターネットの活用についても言及している。

 足立氏は委員会で「私たち日本維新の会は、NHKを公共NHKと、民間とイコールフッティング(基盤、条件を同じにする)で競争する民間NHKとに分割する改革案を公表している」とも説明した。維新は令和元年の参院選のマニフェストで、NHK改革について「防災情報など公共性の高い分野は無料化し、スマホ向け無料配信アプリを導入。有料部分は放送のスクランブル化と有料配信アプリの導入」と打ち出している。

 受信料を支払った人だけが放送を見られるようにする「スクランブル化」について、NHKは公共放送として問題点があるとの立場を取っており、維新の主張とはかけ離れている。

共産は議事録問題で反対

 一方、維新とともにNHK予算に反対している共産が理由として挙げたのは、かんぽ生命保険の不正販売を報じた番組をめぐる日本郵政グループからの抗議を受け、経営委員会が当時の上田良一会長に対する厳重注意に至る経緯を記した議事録の開示問題だ。

 この問題では、NHKの第三者機関「情報公開・個人情報保護審議委員会」が2度にわたり、開示を求める答申を行った。経営委は「元々公表を前提に議論したものではない」などとして、議事録ではなく経緯を説明する文書公表にとどまっている。

 共産の本村伸子氏は3月22日の委員会で、「協会全体のガバナンスにかかわる会長厳重注意という重大な決定を行った議事録の開示を拒み続け、視聴者・国民への説明責任を放棄する経営委員会、執行部の姿勢は断じて許されない。こうしたもと、NHK執行部が編成し、経営委員会が議決をした予算に対して承認することはできない」と反対理由を説明した。

 議事録を公表するかしないかについては経営委で検討しており、執行部にとっては対応が難しい。前田会長は20年3月の衆院総務委で、「NHKは、視聴者・国民の皆さまからの幅広い信頼の基盤の上に成り立っており、国民を代表する国会において全会一致で予算を承認していただくことは、その信頼の証しの一つとなると考えている」と全会一致の意義を述べたが、その実現へのハードルは極めて高いといえる。

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