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» 2021年05月10日 07時00分 公開

ソフトバンクが楽天を提訴 「1000億円」損害主張 弱みの通信網整備に逆風

ソフトバンクが、5G通信などの機密も持ち出したとして、元社員と転職先の楽天モバイルに対し、10億円の損害賠償を求める訴訟を東京地裁に起こした。訴訟の行方は楽天モバイルが展開する通信網に影響する可能性がある。

[産経新聞]
産経新聞

 ソフトバンクは6日、高速大容量の第5世代(5G)移動通信システムなどに関する営業秘密を持ち出したとして、同社元社員と転職先の楽天モバイルに対し、10億円の損害賠償を求める訴訟を東京地裁に起こした。ソフトバンクは約1000億円の損害賠償請求権が存在すると主張しており、その第1弾としている。訴訟の行方は楽天の携帯電話事業の最大の弱点である通信網の展開に不安をもたらす可能性があり、商用サービス開始から2年目に入った勝負の年の事業展開に逆風が吹きかねない。

 ソフトバンクは不正競争防止法に基づき損害賠償額を算定。元社員が持ち出した営業秘密は、基地局網の構築に関するもので、基地局建設の効率化やエリア拡大による契約獲得などの利益を損害賠償額として計上した。今回の提訴で、まず4カ所の基地局の使用停止を求めている。

 一方の楽天は「社内調査でソフトバンクの営業秘密を業務に利用していた事実は確認されていない」とし、裁判で正当性を主張する意向だ。今夏までに4Gも含めた人口カバー率96%を目指す基地局整備計画の前倒しについても「影響はない」と強調する。

 ただ、今回の訴訟で楽天は最大の弱点である通信網の脆弱さに対する不安が深まることは否めない。

 楽天は自社回線エリアを拡大させる一方、基地局などを借りるKDDI(au)とのローミング契約については解消を進めている。ただ、楽天は屋内でつながりやすい「プラチナバンド」と呼ばれる周波数帯の割り当てを受けておらず、自社回線だけでは地図上でエリア内でも圏外になる場所が増える欠点を抱える。そのうえ今回の訴訟で敗れることになれば、せっかく進めた既存の設備の廃棄などに追い込まれる可能性もある。

 楽天グループの携帯電話事業は2020年12月期連結決算で2269億円の営業赤字だった。巨額の賠償金や和解金が科された場合でも5年度の黒字化という目標の達成にとって痛手だ。

 楽天モバイルは通信利用量が月1GB以下なら料金を0円にするなど、割安さで顧客をつなぎ留め、グループのネット通販や金融サービスなどに誘導する事業構造だ。ただ、楽天はグループとしても中国Tencent子会社からの出資受け入れで、日米両政府の監視対象になっている。三木谷浩史会長兼社長は「何を大騒ぎしているのか、全く意味が分からない」と不快感を示すが、企業イメージは悪化しており、狙い通りの相乗効果を発揮できるか、苦境が続きそうだ。(高木克聡)

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