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» 2021年05月11日 07時00分 公開

スーパーシティ構想 危うさ潜む個人データ活用

AIやビッグデータを活用し、未来型の都市の実現を目指す「スーパーシティ」構想。大阪府など国の公募に応募している。しかし、運営には購買や移動履歴といったさまざまな個人情報の収集・活用が必要で、実現への課題になっている。

[産経新聞]
産経新聞

 4月16日を期限として国が公募していた「スーパーシティ」構想に大阪府市が応募した。AIやビッグデータを活用し、未来型の都市の実現を目指す構想で、選定されれば国家戦略特区として独自の規制緩和が可能になる。ただ、スーパーシティの運営には購買や移動履歴、健康状態といった、さまざまな個人情報の収集・活用が必要で反発も予想される。実現へのハードルはけっして低くない。(黒川信雄)

photo スーパーシティの設置が予定される「うめきた2期」地区=大阪市北区(本社ヘリから)

AI活用、夢の未来都市

 「平日の仕事の疲れを取るために、今日はヨガのレッスンに参加しませんか」

 JR大阪駅北側に開業した「うめきた2期」内のスポーツジムに来た30代のA子さんのスマートフォンには、こんなメッセージが現れた。提案は、A子さんが装着する腕時計から収集された血圧や心拍数などのデータをインターネット経由でAIが分析し、A子さんに最適な提案として配信されたものだ。

 ヨガを終えたA子さんが次に買い物に行こうとすると、スマホには「間もなく無人運転車が近くに停車します」との文字が。敷地内を回遊する車がやって来てスマホで指定したシューズショップまで運んでくれた。店内では、以前から気になっていたジムで履くのにぴったりのシューズをロボットが勧めてくれた。

 スーパーシティの構想が実現すれば、数年後にはこのような光景が当たり前になる可能性がある。

31組の自治体応募、5カ所選定

 今回、スーパーシティ構想に応募したのは大阪府市を含む31組の自治体。6月にも開かれる政府の国家戦略特区諮問会議で5カ所程度が選ばれる見通しだ。

 大阪府市は今回、「健康といのち」をテーマにスーパーシティ構想を提案した。実施対象としたのは、令和7年に大阪・関西万博が開催される夢洲(大阪市此花区)と、JR大阪駅北側の再開発区域「うめきた2期」の2カ所となる。

 夢洲ではまず、万博の敷地整備の工事で、複数の建設会社の車両や人の動きを横断的にデータとして収集。AIで分析し、円滑な工事や作業員の健康維持につなげる。万博や、2024年夏に先行街びらきが予定されるうめきた2期でもデータ分析から可能になるさまざまな次世代サービスの提供を実現させる。

 スーパーシティにおける次世代サービス実現のカギとなるのが、「データ連携基盤」と呼ばれるプラットフォーム。企業や行政、個人などの膨大なデータを集約・分析し、さまざまな住民サービスの提供につなげる。国はスーパーシティ構想に応募する自治体に対し同基盤の構築を求めている。データが多く集まるほど、きめ細かなサービスの提供が可能になる。

 データの収集には、提供者の同意が必要となる。今回、大阪府市がスーパーシティの対象地域に選んだ夢洲とうめきた2期は現在人が住んでおらず、そのような土地は「グリーンフィールド」と呼ばれる。グリーンフィールドは、住民合意などの複雑な手間が不要で、スーパーシティの実現が比較的容易であると指摘されている。

 一方、他の多くの自治体は「ブラウンフィールド」と呼ばれ、すでに人が住んでいる地域をスーパーシティの対象としている。その点で大阪は、国の承認取り付けに向け「優位な立場にある」(財界関係者)とされる。

 もっともグリーンフィールドでも今後、日中だけ来て働くだけの人などから何らかの形で情報収集の合意を得る必要がある。夢洲、うめきた2期でスーパーシティが実現した後、大阪府市は「大阪全体のブラウンフィールドにも(スーパーシティを)展開していきたい」(大阪市ICT戦略室)考えだ。

Google計画は住民反対で頓挫

 大阪府市がスーパーシティの実現を目指す背景には「少子高齢化や人口減少、また短い健康寿命といった、多くの社会課題の解決につなげる」(同)狙いがある。

 現在約880万人の大阪府の人口は、2040年には750万人に減少し、65歳以上の高齢者人口が3割超に達すると推定されている。人口減少と高齢化が急速に進んでも住民生活を維持するには、ITを活用した効率的な住民サービスが不可欠となる。

 府市のスーパーシティ構想には関西財界も期待を寄せる。「データ連携基盤を活用し、新たな商品やサービス開発の需要が生まれれば、経済の活性化につながる」(大阪商工会議所の槇山愛湖理事)からだ。

 ただ、個人情報を集めたり利用したりするのに同意を得るのは容易ではない。そのためには購買や移動履歴、健康状態といった、さまざまな個人情報の流出と悪用、プライバシーの侵害などを防ぎ、住民らが安心できる仕組みが必要となる。

 同様の構想の実現が進められたカナダ・トロントでは、米Googleの関連会社が進めたプロジェクトが住民の反対などで頓挫した。

 大阪府市のスーパーシティ構想で、データ連携基盤に関する企画を統括する「アーキテクト」を務める下條真司・大阪大サイバーメディアセンター長は「大阪・関西万博、またうめきた2期は(データ利活用のメリットを理解してもらう)新たなチャンスになる」と強調する。懸念を払拭し、住民の意識を変えることができるか。大阪の戦略が注目されている。

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