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» 2021年06月03日 07時00分 公開

危険冒しても子を助ける親心 マウスで脳内メカニズム特定

母親マウスが、自分の身を危険にさらしても子供を助けようと行動する脳の仕組みを明らかにしたと、理化学研究所などの研究チームが発表。子育ての意欲が増す脳内メカニズムの一部が明らかになったとしており、虐待や養育放棄など人間の親子が抱える課題の解決につながるという。

[産経新聞]
産経新聞

 母親マウスが、自分の身を危険にさらしても子供を助けようと行動する脳の仕組みを明らかにしたと、理化学研究所などの研究チームが発表した。1日付の米科学誌に掲載された。子育ての意欲が増す脳内メカニズムの一部が明らかになったとしており、虐待や養育放棄など人間の親子が抱える課題の解決につながると期待される。

 研究チームの黒田公美チームリーダー(行動神経科学)らはこれまでの研究で、脳の中心近くにある小さな部位が子育てに必須の機能を持つことを明らかにした。しかし、この部位には7種類以上の神経細胞があり、どれが重要な役割を持つかは分からなかった。

 チームは今回、活動している神経細胞を染色する技術を使ってマウスの脳を調べ、子育て中に最も活性化している神経細胞を見つけた。この神経細胞が働かないようにしたところ、授乳などの子育て行動が激減し、子マウスの生存率も約4分の1に低下した。

 この神経細胞の表面には、特定の分子と結合することで神経細胞の活動を制御している「カルシトニン受容体」がある。この受容体が、出産した母親マウスでは未交尾のメスと比べて約8倍に増えていた。

 次に神経細胞そのものは働くものの、この受容体の量を約半分にしたマウスで実験すると、安全なケージでは子育てできたが、危険な環境では困難になることが判明した。

 具体的には、壁がなく、宙に浮かんだようにみえる細い十字路の四隅に、母マウスと3匹の子マウスを配置。マウスが非常に危険だと感じる環境の中で、母マウスが子を世話するために自身の側に集める「レトリービング」(子集め)ができるかを観察した。その結果、受容体の量を約半分にした母親と、通常量の母親で比べると、後者は前者の約半分の時間で子育てをこなした。

 この結果から、チームは、この受容体が危険を冒しても子育ての意欲を保つのに重要な役割を担っていると結論付けた。今後、より人間に近い親子関係が観察できる霊長類のマーモセットを使って実験を進める計画で、黒田氏は「将来的に人間の親子関係の理解と支援につなげたい」と話した。

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