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» 2021年06月03日 07時00分 公開

肉眼・内視鏡検査では見つけにくい「陥凹型がん」 AI活用で検出しやすく

通常の内視鏡検査では発見が難しかった「陥凹型がん」。昨今では、AIを活用することで見つかるようになってきた。どういった手法で検出しているのか、AIの開発に携わったキーマンに聞く。

[ZAKZAK]
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 大腸がん診断の常識を変える、AIを搭載した内視鏡検査が登場した。大腸がんといえば、良性のポリープが悪性化するというイメージがほぼ定着しているが、盲点は陥凹(かんおう)型の大腸がんだ。通常の内視鏡検査では発見が難しかったが、AIにより陥凹型がんが見つかるようになってきた。陥凹型の大腸がん診断・治療の権威でAIの開発に携わった昭和大学横浜市北部病院の工藤進英・消化器センター長に、世界初となる最先端の検査方法について聞いた。

 工藤医師が見せてくれたのは、大腸を内視鏡でのぞきこんでいる画像。皆さんは、がんの場所はどこか見つけられるだろうか。隠し絵のようにも映るが、この画像のどこかに、がん病変が潜んでいるという。工藤医師に詳しく説明してもらう。

 「このケースではがん病変は横行(おうこう)結腸付近にあり、典型的な陥凹型でした。最初の画像ではがんがある場所は薄く赤みがかっている程度で、見た目でがんかどうかの判断は難しい。AIはその段階でがんの可能性を指摘し、検査薬のインジゴカルミン色素をかけると、がんがくっきり見えるようになりました。AIは潜んでいた陥凹型がんに反応し、その判断は正解だったのです」

 この陥凹型がんは顔つきが悪いタイプで、その姿は次の画像に映し出された。顔つきが悪いがんは一般的に悪性度も高くなり、発見が遅れると、命の危険が高まるという。

 経験の浅い医師なら見落とすかもしれないが、AIはシュアな仕事をする。AIは医師の実力によらず、このようながんも発見するのだ。

 このがんが見つかったのは大腸がんが増える年代の60歳代の患者。最初の画像と2枚目の画像をそれぞれ見せられ、「最初の画像だけでは、がんと診断するのは難しいかもしれない。がんが見つかるのはうれしくないけど、見落として進行してしまうのはとても怖いこと。だから、AIはよくぞ見つけてくれたという気持ちですね」と胸をなでおろしていたという。

 がんの発見に多大な貢献をしたのは、「EndoBRAIN−EYE」(エンドブレイン・アイ)というソフトウェアで、工藤医師が名古屋大学・森健策教授、オリンパス、IT企業のサイバネットシステムと数年かけて共同開発した。専門医に匹敵する高い精度で大腸内視鏡画像の診断支援を行うソフトウェアだ。AIを用いた内視鏡関連ソフトウェアとして、国内で初めて医療機器の承認を得たそうだ。

 実際、エンドブレイン・アイの検出感度は95%に上る。それでも「95%ということは、現状ではエキスパート(熟練)医師を超える精度には至っていません。過剰な期待は禁物で、AIはあくまでサポートで最終的な診断は私たち人間の医師になります」と、がん医療に完璧を求める工藤医師は気を引き締める。

 今後、AIの精度がさらに向上し、がんの早期発見に寄与することに期待が高まっている。(取材・佐々木正志郎)

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