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» 2021年06月23日 07時00分 公開

性教育が減った若年層を支援 厚労省研究班、スマホで見られる教材作成

コロナ禍でDVや妊娠相談への課題が表出する中、厚労省研究班が性教育の教材「#つながるBOOK」を作成。これを基に、医師などで構成される日本家族計画協会といった団体が若年者への啓発・教材作成の取り組みをスタートさせている。

[ZAKZAK]
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 第一次緊急事態宣言下の人流が止まった世界で、DV相談のデータを分析すると、加害者側が無自覚、女性の不安定就労が多いことが分かった。弱者、困窮者が活用できる制度、妊娠相談など診療環境の保持、学校・保健所など相談窓口の確保とアクセスしやすさの検討など、見えてきた課題は山積である。

 「正しい窓口は必要ですが単純ではありません。SNSに性の健康を脅かすものが隠されている時代です。性教育をするにもSNSを使うのが有効だという大いなる矛盾があります。しかし、コロナ禍であっても性教育を諦めてはいけないと取り組んでいます」

 そう話すのは、医師で日本家族計画協会会長の北村邦夫氏。若年者への啓発・教材作成の取り組みをスタートさせている。

 その一つが本研究班で作成した性教育啓発資材「#つながるBOOK」。スマホやiPadで気軽に見ることができる。予期せぬ妊娠、妊娠不安や葛藤、性暴力の予防、生命を大切にするために尽力。相手を思いやる、性別・人種・年齢等にかかわらず相手との対等な人間関係づくりを推進するなど、そのための、性と生殖にかかわる健康教育は必須であると強調。産婦人科医等による出張講座を積極的に行っていくという。

 「恋愛しなきゃだめ?」「恋人同士はいちゃいちゃしなきゃいけないの?」「性器の挿入だけがセックスじゃない」など、性にまつわる素朴な疑問や悩みから、「避妊方法」「避妊に失敗したら」「性感染症」「妊娠」「出産」まで網羅されている。

 より詳細な情報が必要な場合は専門機関や相談窓口にアクセスできるQRコードがついている。

 「コロナ禍では確実に性教育の機会は奪われ、自粛下で性を学ぶ機会がさらになくなっています。それによるメンタルヘルスの悪化、子育ての支援不足、孤立の加速を調査結果は示しています。一方で間違った情報は巷にあふれています。大事なのは正しい知識・情報が得られる学習です。学習なしには、性の健康を守ることはできません」(北村氏)

 かつてこんな研究実験がなされたことがあるという。性交経験のない若い男女をひとつの部屋に2人きりにしたが、普通に会話はするが、本能で抱き合うことはなかった。そこで、部屋の冷房を強くしたところ、寒さをしのぐため抱き合ったが、セックスには至らなかった。セックスの知識がなかったからだ。

 「上野動物園の飼育係の方に聞いた話ですが、チンパンジーには性交のDVDを見せて教育しているそう。野生で自然に学んでないため性行為の知識がないのです。人間も同じで、本来は正しい性教育を学校でしっかりやるべきなのですが、なかなかうまくいっていません。自分を守るため、子供を守るためにも、正しい知識を学ぶことが大事です」(北村氏)。

 自分の学生時代にはなんとなく保健室にたむろして、親には言えない悩みを相談していたことを思いだした。

 「#つながるBOOK」、ステイホームでも相談窓口とつながることができる。自粛下で孤立しないためにも、ぜひアクセスを。読者の子や孫の世代にもさりげなく伝えてほしい。(取材・熊本美加)

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