ITmedia NEWS >
ニュース
» 2021年07月16日 07時00分 公開

「ゲーミフィケーション」って何? 生活改善・人材育成にゲーム要素

ゲーム開発に生かされてきた人を楽しませるノウハウを生活習慣の改善などに役立てる「ゲーミフィケーション」の取り組みが本格化している。得点や記録といったゲームに不可欠な要素で継続することが難しい運動などの楽しみを向上させる仕組みで、企業の人材育成などにも活用されている。

[産経新聞]
産経新聞

 ゲーム開発に生かされてきた人を楽しませるノウハウを生活習慣の改善などに役立てる「ゲーミフィケーション」の取り組みが本格化している。得点や記録といったゲームに不可欠な要素で継続することが難しい運動などの楽しみを向上させる仕組みで、企業の人材育成などにも活用されている。ゲーミフィケーション関連市場は世界で4兆円近くに達するとの試算もあり、ゲーム産業が集積する日本経済の追い風になるとの期待もある。

photo

スマホ普及で注目

 ゲーミフィケーションとはゲームで活用されているさまざまな仕組みを別の分野に応用すること。英語の「ゲーミファイ」(ゲーム化)という言葉が由来だ。ゲームにはプレーヤーを熱中させるノウハウが注ぎ込まれており、「依存症を招く」と否定的にみられることもある。しかしその仕組みを運動や学習に生かせば、ゲーム以外の分野で前向きな効果を得ることができるとも期待される。

 ゲーム業界関係者は「ゲーミフィケーションという言葉自体は10年ほど前からある。しかしスマートフォンが広い世代に行き渡り、ゲームがより身近になったことで注目度が高まった」と話す。

 ゲーミフィケーションの代表例として話題を集めたのが2016年に配信が始まったスマホゲーム「ポケモンGO」だ。スマホの衛星利用測位システム(GPS)を活用して、歩けば歩くほどゲーム内での「強さ」を増すことができるといった仕組みを採用。毎日遊ぶことで特典がもらえたり、他のプレーヤーと協力して目的を達成できたりといったゲーム要素で楽しみながら、歩くという運動が習慣になるとして世界中で大流行した。

保険・製薬会社も

 ゲーミフィケーションへの注目はこれまでゲームとは縁遠かった企業がゲーム会社と連携する動きを生み出している。

 第一生命ホールディングスは6月、スマホ向けゲーム大手のDeNAとヘルスケア関連サービスについて業務提携したと発表した。女性向けの情報サイトやダイエット用アプリの開発・運営を行う。運動など健康になる行動を習慣化できれば、消費者は保険料を安くできる一方、保険会社は支払う保険金を抑制することができる。

 ここで生かされるのがDeNAのノウハウだ。身長や体重、摂取カロリーなどを記録すると、その人にあった運動の動画などを紹介し、アニメキャラクターが利用者を励ましたり、体重が減っていく様子を分かりやすく表現したりといった工夫がこらされている。DeNAは「数カ月にわたって健康になる習慣を身に付けてもらうような仕組みを取り入れている」と説明している。

 また東和薬品とバンダイナムコ研究所は薬の飲み忘れを防ぐ服薬支援ツールを開発中。飲み忘れで無駄になった残薬が医療費高騰の一因となっており、京都大などと実証実験を重ねている。

簡単操作で楽しむ

 ゲーミフィケーションが達成するのは個人の楽しみだけではない。企業が従業員のやる気を高めるために人事制度に取り入れたり、顧客とのコミュニケーションに応用したりといった用途もある。またタクシー会社や運送会社向けに、急ブレーキや急ハンドルといった運転時の挙動をスコア化し、運転技術の向上に役立てるアプリも開発されている。

 米国の調査会社によると、世界のゲーミフィケーション関連市場は、20年に87.3億ドル(約9700億円)規模となった。27年まで年平均20%以上成長し、350億ドル(約3兆9000億円)に拡大するとも予測されている。

 一方、ゲーミフィケーションは単にゲーム要素を取り入れれば楽しくなるといった単純なものではない。

 サービスを広く受け入れてもらうためには、利用者とサービスの間をどのようにつなぐかというユーザーインターフェースの考え方が肝要だ。多くのゲームは説明書がなくても直感的に操作できるように工夫がこらされ、簡単な操作で子供から大人まで楽しむことができる仕組みに作りこまれている。あるゲーム会社首脳は「UIこそゲームの命」とし、ゲーム業界が築き上げてきたノウハウに自信を示す。

 日本には任天堂やソニー・インタラクティブエンタテインメント、スクウェア・エニックス、カプコン、コナミなど、家庭用ゲーム機大手からソフトメーカーまで世界有数のゲーム会社が集積している。スマホ向けゲームでもDeNAなどがアジアを中心に海外展開を加速している。

 日本におけるゲーム産業の厚みはゲーミフィケーションの開発や導入を後押しする要素だ。ゲーミフィケーションの浸透は、デジタル化で出遅れた日本経済を刺激するカギになる可能性もある。

20兆円ゲーム市場 アジアが過半数

 オランダの調査会社ニューズーによると、2021年の世界のゲーム市場は前年比1.1%減の1758億ドル(約20兆円)で、新型コロナウイルス禍で急拡大した前年と同水準となる見込み。スマートフォンとタブレット端末向けの市場規模の合計は市場全体の5割を超えた。

 世界のゲームプレイヤー数は同5.3%増の30億人で、アジア太平洋地域が16億1500万人と過半数を占める。中国市場の拡大が主な要因で、ゲーミフィケーション市場も、伝統的な北米・欧州市場と新興の中国市場が牽引(けんいん)するとみられている。

 ただ、巨額の資金でゲームを開発する中国メーカーの成長は著しく、日本市場は攻勢をかけられているのが現状。ゲームから広がっていくゲーミフィケーション市場も見据えた覇権争いも激化するとみられる。

copyright (c) Sankei Digital All rights reserved.