ITmedia NEWS >
ニュース
» 2021年07月16日 07時00分 公開

大阪府が取り組む“子供の居場所づくり” プログラミング教育やeスポーツの場としても活用

子供が未来をつかむきっかけを提供しようと、大阪府門真市が子供のための施設「子どもLOBBY」をオープンさせた。子供の貧困や孤立が問題となり、安心して食事や宿題ができ、遊べる居場所をつくる動きが全国で進むが、ここでは30もの民間企業や団体がプログラミング教育などで協力するのが特徴だ。

[産経新聞]
産経新聞

 子供が未来をつかむきっかけを提供しようと、大阪府門真市が子供のための施設「子どもLOBBY」をオープンさせた。子供の貧困や孤立が問題となり、安心して食事や宿題ができ、遊べる居場所をつくる動きが全国で進むが、ここでは30もの民間企業や団体がキャリア教育で協力するのが特徴だ。フィギュア制作会社「海洋堂」のミュージアムも隣に完成、子供たちをひきつける。専門家は「企業が地域の子供たちの問題をわがことととらえて行政と連携するモデルケースになる」と注目する。

photo 海洋堂造形師の作業の様子を間近に見られるコーナー=大阪府門真市(恵守乾撮影)

30の企業が協力

 子どもロビーは6月、京阪門真市駅と大阪モノレール門真市駅近くにあるイズミヤ門真店3階に開設された。日曜日には子供たちが将来を思い描くためのキャリア教育、平日はテストなどでは測れない自己肯定感や思いやりなどを養うためのプログラムを行い、放課後や週末の居場所としても開放する。

 「ペッパー君が話す速さを変えてもいいですか」

photo イズミヤ門真店内にオープンした「「子どもLOBBY」=大阪府門真市(恵守乾撮影)

 7月上旬に開かれたソフトバンクによるプログラミング体験教室では、小学生たちが身を乗り出してパソコンに向かい、ヒト型ロボットが発するセリフや身ぶりを自在に操っていた。

photo

 「プログラマーという仕事や、スマートフォンもペッパーも『こんなものがあったらいいな』と人間が想像力で生み出したことを伝えたい」とソフトバンクCSR本部の山口和代さんは話す。

 子どもロビーでこうしたキャリア教育に協力する企業や団体、大学は約30に上る。市こども政策課の美馬忠法課長は「子供の将来につながるキャリア教育には企業の関心が高く、快く引き受けてもらえる。参加希望者も毎回定員を上回っており、子供たちに人気のある声優やeスポーツのプログラムも検討中」と話す。

課題は貧困連鎖

 同市ではこれまでも地域の子供を地域で見守る事業に取り組んできた。

 市が2016年度に市内の小学5年生、中学2年生の保護者を対象に調査したところ、同市の相対的貧困率(可処分所得が全体の中央値の半分に満たない割合)は府内平均より高く、年間の手取り収入が111万円未満の世帯が16.4%に上ることが判明。貧困の連鎖を断つことは市の大きな課題となり、17年からは貧困状態にある子供の早期発見を目指す「子どもの未来応援ネットワーク事業」を開始した。市民約1300人がボランティア登録し、いつも服が汚れていたり深夜に出歩いたりする子供の情報を専門チームと共有し、保護者に市の支援を受けるよう働きかけてきた。

 19年11月に開催された「子どもを真ん中においたネットワークフォーラム」では学識者や地域、NPO、企業、行政の関係者が、子供の貧困対策でどう連携できるかを話し合い、イズミヤを運営するエイチ・ツー・オーリテイリングは門真店3階の活用を提案。昭和40年代から市民に親しまれてきたスーパーマーケットの空きフロアを利用した子供の居場所づくりが、子どもロビー開設のきっかけとなった。市こども政策課の小西紀至副参事は「市が支援を働きかけたくても役所に行くのをためらう保護者は多く、気軽に立ち寄れる場所が必要だった」と振り返る。

気軽に立ち寄れる場所に

photo

 子どもロビーは賃料無料の上、家具をIKEA鶴浜店、大型モニターを門真ロータリークラブが提供するなど、すべての設備を民間からの寄付でまかなった。宮本一孝市長が同市に本社を置く海洋堂に活用を持ちかけ、同社が直営ミュージアムを開設。子どもロビーにもフィギュアの塗装体験などで協力する。お披露目の式典に出席した大阪府の吉村洋文知事は「公と民が協力した新しい支援の場。府も一緒に子供たちが可能性を追求できる社会を目指したい」と語った。

 また、子供の貧困問題に詳しい大阪府立大学の山野則子教授(児童福祉)によると、複数の企業や団体がキャリア教育など目に見える形で行政に協力する貧困対策は他にないといい、「企業の多くが『子供の未来に役立てるなら』という思いを持っており、門真市のようにうまく取りまとめられれば、他の地域にも広がっていくのでは」と期待。子どもロビーについては「貧困家庭は親も子も孤立しがち。イズミヤという立地は生活の延長線上にあり、気軽に立ち寄って日常の話を聞いてもらえるような場所になってほしい」と話している。(守田順一)

copyright (c) Sankei Digital All rights reserved.