ITmedia NEWS >
ニュース
» 2021年07月27日 07時00分 公開

オンライン会見、事前予約……コロナ禍の五輪取材

多くの競技が無観客で行われている東京五輪で、熱戦の様子を伝える報道の在り方が大きな変化を強いられている。五輪史上初めてオンライン会見が導入され、選手らの「生の声」を発信する工夫がなされる一方、会場で取材できる記者の数が制限され、事前予約も求められる。

[産経新聞]
産経新聞

 新型ウイルスコロナ禍で多くの競技が無観客で行われている東京五輪で、熱戦の様子を伝える報道の在り方が大きな変化を強いられている。五輪史上初めてオンライン会見が導入され、選手らの「生の声」を発信する工夫がなされる一方、会場で取材できる記者の数が制限され、事前予約も求められる。海外メディアからは感染対策も含めた複数のアプリの使い勝手の悪さや、会場への移動の不便さに不満の声も上がる。

photo 東京五輪のメインプレスセンター(MPC)にあるヘルプデスクで相談する海外メディア関係者=25日、東京都江東区

 福島県で22日に実施されたソフトボールの米国−カナダ戦後の記者会見。会見場内での質疑応答が一段落したタイミングで、オンラインのチャットに米紙の記者が英語で書き込んだ「(会場近くに出た)熊の話を聞いているか?」という質問が読み上げられると、会見場に笑いが起きた。

 オンライン会見の導入は五輪史上初めてで、試合後のみならず、選手村の入村時やメダリストの一夜明け会見などで頻繁に活用されている。リアルタイムでどこからでもアクセスでき、チャットを通じての質問も可能。五輪の国際標準に合わせ、原則として英語で進行される。

 福島県の会見場には間隔を空けて50席ほどが用意されたが、海外チーム同士の対戦後の会見では空席が目立った。コロナ禍で来日する海外メディアが減少している影響もあるとみられ、組織委員会の広報担当者が日本のメディアに参加を呼びかける一幕もあった。

 オンラインで選手の声を聞く機会が広がっている半面、会場を直接訪れての取材は困難がつきまとう。

 組織委は感染防止のため、会場に入る記者の数を大幅に制限。取材パスがあっても競技ごとに事前申請し、承認を受ける必要がある。前日夕方までの申請結果の通知が日付をまたぐこともあり、日本の全国紙記者は「事務作業が大変なのは分かるが、取材計画が立てづらい」と嘆く。

 取材制限には、海外メディアからも不満が漏れる。フランス人記者によると、同国代表選手が出場している試合にも関わらず、取材を認められた同国メディアの記者が数人に抑えられるケースが続出。この記者は取材申請の仕組みが「公平じゃない」と憤る。

 健康管理や接触確認などのコロナ対策用に加え、同時通訳など取材に必要なアプリが複数あるが、別々のサイトから手続きをしなければならない。報道拠点のメインプレスセンター(MPC、東京都江東区)では、ボランティアらにアプリの使い方などを尋ねる海外記者の姿が目立つ。

 会場への移動手段も取材の足かせになっている。公共交通機関が使えないため、宿泊先から専用バスでMPCに向かい、改めて専用バスで会場に向かう必要があるからだ。

 東京国際フォーラム(千代田区)で行われた重量挙げを取材したドイツの週刊誌「デア・シュピーゲル」の記者は「会場から500mほどのホテルに滞在しているが、移動に2時間近くかかる。歩けば数分で着く距離だ」と指摘。「日本の交通網は体系化され、スムーズで頻繁に電車やバスがくるイメージがあっただけに、五輪の移動システムは使いづらい」と話した。(坂本一之、原川真太郎、大渡美咲)

copyright (c) Sankei Digital All rights reserved.