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» 2021年08月10日 07時00分 公開

中韓メダリストも中傷の標的 SNSの功罪

熱戦が繰り広げられた東京五輪だが、選手のSNSをめぐっての議論も過熱していた。選手自らが情報発信し、ファンと交流できるとあってもはやSNSは欠かせないツールだ。その一方で、ナショナリズムが高まりやすくなる五輪の試合では、試合内容や採点方法をめぐって相手選手を誹謗(ひぼう)中傷したりするなど、匿名性を盾に過激化している。選手のメンタル面にも大きな影響を及ぼしている。

[産経新聞]
産経新聞

 熱戦が繰り広げられている東京五輪だが、選手のSNSを巡っての議論も過熱している。選手自らが情報発信し、ファンと交流できるとあってもはやSNSは欠かせないツールだ。その一方で、ナショナリズムが高まりやすくなる五輪の試合では、勝敗を巡って自国の選手を一方的に批判したり、試合内容や採点方法をめぐって相手選手を誹謗(ひぼう)中傷したりするなど、匿名性を盾に過激化している。選手のメンタル面にも大きな影響を及ぼしている。

応援メッセージ

 「日本の幸運を祈っています。頑張れ! ニュージーランドフットボール」

 サッカー日本代表の中山雄太は1日、白板に日本語と英語で書かれた応援メッセージの写真をInstagramに投稿した。7月31日、サッカー準々決勝でニュージーランドと対戦し、日本がPK戦を制して準決勝にコマを進めた試合後、ニュージーランドチームが「サプライズメッセージ」を残していたことを紹介した。

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 この投稿に対して、「感動」「ニュージーランドチームの選手全員にbigup」「素晴らしいスポーツマンシップ」などの称賛メッセージが相次いだ。

 こうしたスポーツマンシップにあふれる出来事が五輪の醍醐味(だいごみ)でもある。選手しか入れないロッカールーム内の出来事について、選手の発信によって知ることができるのもSNSならではだ。

 Instagramで670万人以上のフォロワーがいる体操女子のシーモン・バイルスは精神的ストレスを理由に個人総合決勝などを棄権。インスタグラムのコメント欄には「あなたのことを誇りに思う」「あなたは本当に素晴らしい! これからも応援します」などの応援メッセージが相次いだ。

多くの選手が被害

 その一方で、誹謗中傷も多いのが現状だ。

 テニスの大坂なおみが7月27日の女子シングルス3回戦敗退後、Yahoo!ニュースやTwitterなどに批判コメントが続出。7月28日には徳間書店が業務委託している編集者が、容姿などを中傷する差別的な内容をツイッターに投稿していたとして、同社は契約解除したと発表。公式サイトで謝罪した。

 体操男子個人総合で金メダルに輝いた橋本大輝に対しては、採点を疑問視する中国語のコメントが相次いだ。

 橋本は自身のInstagramに「国の代表として努力してきたアスリートを認め、称賛する人が増え、誹謗中傷とみられる行為が少なくなることを願っています」と投稿した。

 体操女子の村上茉愛も5位に入った7月29日の個人総合決勝後、これまでSNSで誹謗中傷を受けたことがあると告白。「見たくなくても嫌なコメントを見てしまい、すごく残念だなと悲しかった」と涙を浮かべて語った。

海外でも

 他国でもこうした誹謗中傷は激化している。試合以外にも容姿や発言をめぐって言いがかりともいえるようなコメントもみられる。

 韓国で批判の対象となっているのは、アーチェリー競技で女子団体と混合団体、個人の3つの金メダルを手にした安山(アン・サン)だ。髪形がショートヘアであることなどを理由に「フェミニストなら金メダルを返せ」などと、メダルの返還や選手資格の奪を求める意見がアーチェリー協会の掲示板に集中した。

 韓国では、フェミニズム運動が高まる一方で、反発も高まっており「フェミニスト」という言葉を揶揄する言葉として用いるなど、一部で過激化。ショートヘアの女性に対して「フェミ」などととレッテルを貼って揶揄(やゆ)したりすることもある。

 安は以前に、SNSで「なぜ髪を切るんですか?」との質問に「その方が楽だから」と答えた内容が、一部の男性中心サイトに広がり、誹謗中傷が拡大した。

 これに対して、女性らが自身のショートヘアの写真をSNSに投稿したりするなど、対立が深刻化している。

 中国では、卓球混合ダブルスで金メダルを獲得した水谷隼、伊藤美誠組に敗れた中国ペアに対して、批判が噴出。また、バドミントンダブルスで台湾勢に負けて銀メダルとなった李俊慧(リ・ジュンフイ)、劉雨辰(リュ・ウシン)組に対しても容赦ない批判が相次ぐ。

 中国の短文投稿サイト「微博」(ウェイボ)には「まったくコミュニケーションが取れていない」「やる気がない」「態度が悪い」など批判するコメントが相次いだ。

 こうした状況を受け、東京五輪の日本選手団の福井烈団長は1日の記者会見で、代表選手のSNSなどに誹謗中傷が書き込まれている問題について「選手が積み重ねてきた努力を侮辱する行為。断じて許されない」と強く非難した。

 日本オリンピック委員会(JOC)は大会中、監視チームを設置しており、福井氏は問題のある投稿は「記録として残している」と説明。選手団本部役員の籾井圭子氏は、悪質なケースについては「警察との連携を検討していく可能性がある」と述べた。

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