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» 2021年09月01日 07時00分 公開

500億円市場 急拡大するクラウドファンディングの光と影

新型コロナウイルス禍で苦境にあえぐ中小企業や飲食店が増える中、インターネットで資金を募る「クラウドファンディング」が急拡大している。金融機関の融資よりも資金集めのハードルは低く、従来なら挑戦できなかったようなプロジェクトが実現可能になった。一方で、企画者の説明が不十分だったり、見通しの甘さによって計画が実行できなかったりといったトラブルも後を絶たない。

[産経新聞]
産経新聞

 新型コロナウイルス禍で苦境にあえぐ中小企業や飲食店が増える中、インターネットで資金を募る「クラウドファンディング」(CF)が急拡大している。金融機関の融資よりも資金集めのハードルは低く、従来なら挑戦できなかったようなプロジェクトが実現可能になった。一方で、企画者の説明が不十分だったり、見通しの甘さによって計画が実行できなかったりといったトラブルも後を絶たない。

公的支援に勝るスピード感

 「伝統産業を守るために職人の雇用をつなげたかったので、本当に助かった」

photo 木製食器メーカー「大橋量器」社長の大橋博行さん(同社提供)

 CFで支援金を募ることに成功した木製食器メーカー「大橋量器」(岐阜県大垣市)の社長、大橋博行さんは振り返る。

photo 「大橋量器」の主力商品である木升(同社提供)

 同市は木製の升の一大産地として知られ、創業70年を迎える同社も升を主力商品として作り続けてきた。だが、コロナ禍で結婚式やイベントが相次いで中止となり、升の売れ行きは減少。緊急事態宣言下の2020年4月には、前年同時期に比べて売り上げが半減した。

 国へ申請した補助金の給付時期も見通しが立たず、職人らへの給与の支払いも危ぶまれた。そうした中、支援者から資金を募る見返りとして、商品やサービスを提供する「購入型」のCFを若手社員が提案。同社の升などを返礼するプロジェクトを同月から始めたところ、1カ月半で300万円の支援金が集まった。大橋さんは「公的支援よりもスピード感があり、支援金も順調に集まったので安心できた」と話す。

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 日本クラウドファンディング協会によると、CFは11年の東日本大震災を契機に、被災地を支援する手段として国内で普及。その後は急成長を遂げ、商品開発から地域活性化まで幅広い用途で利用されるようになった。

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 仲介サイトを運営する主要7社は20年、購入型CFで過去最高を大幅に更新する501億円もの支援金を集めた。これは19年の169億円の約3倍に上る。コロナ禍で苦境に立たされた企業や飲食店などを支援するプロジェクトが、多数実施されたことが影響しているとみられる。

「詐欺まがいのことを…」

 資金調達の新たな手段として普及してきたCFだが、トラブルもある。

 「詐欺まがいのことをされた。もうCFはやらない」。20年5月に購入型CFで支援金を払った横浜市の女性はこう漏らす。

 支援したのは、仲介サイトで見つけた「アイスシルク(絹)生地の冷感マスクをコロナ禍で緊急生産する」というプロジェクト。2万1000円の支援金の見返りに絹製のマスクが提供されるはずだった。だが、女性の元に届いたのは、絹製ではなくポリエステルなどを原料とする化学繊維製のマスクだった。

 女性は企画の内容を勘違いしたのかと思い、サイトを改めて確認すると、紹介文に記載されていた「絹」という表記はいつの間にか消えていた。サイトには他の支援者からの苦情が多数寄せられており、女性もメールで返金を要求。当初は返信はなかったが、「消費者支援機構に相談する」と粘り強く連絡を続け、出資金は幸いにも返金された。女性は「マスクは中国製の輸入品で、プロジェクトの紹介文も内容が変えられていた。CFへの信用はなくなった」と憤った。

審査体制の強化を

 20年、国民生活センターに寄せられたCFに関する相談は200件以上。「お礼の商品が届かない」「企画者からの返信が来ない」といった相談が目立つ。

 相次ぐトラブルに、運営各社も対策の強化を図っている。「CAMPFIRE」は17年、商品が届かなかった際に支援金の8割を上限に支援者に補償する仕組みを導入。「READYFOR」もプロジェクトの実現可能性や法令違反の有無についてチェックしている。

 日本クラウドファンディング協会の深野竜矢事務局長は「企画者の見立てが甘くてトラブルになっているケースもある。支援者が安心してCFを利用できるように、仲介サイトの運営会社には審査体制の強化や審査項目の充実を図ってもらいたい」と話した。(宇山友明)

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