ITmedia NEWS >
ニュース
» 2021年09月09日 07時00分 公開

オランダ式スマート農業で地方に雇用を 3.11被災企業の挑戦

東日本大震災に起因する地盤沈下や塩害に追い詰められた宮城県の農家が、オランダの園芸を手本にしたスマート農業で再び生産性を向上させている。収量や経営の現状をキーパーソンに聞く。

[産経新聞]
産経新聞

 宮城・石巻 「デ・リーフデ北上」総務部部長 阿部淳一さん

photo デ・リーフデ北上の総務部の阿部淳一部長(大柳聡庸撮影)

 「なんだか面白そうだなと感じた」。ITや再生可能エネルギーを活用したトマトとパプリカの生産販売を手掛けるデ・リーフデ北上(宮城県石巻市)に2016年に入社したきっかけをこう振り返る。

 それまでは、コンサルタント業務などを手掛け、農業とは無縁の世界で生きてきた。後継者不足や、きつい仕事といったイメージなどが重なり、日本はじり貧の農家も少なくない。しかし、ITや再生エネを使った農業に新しい可能性を見いだした。

 同社は東日本大震災で被災したことを機に、14年に創業した比較的新しい会社だ。稲作などを営んでいた鈴木嘉悦郎社長の自宅兼会社が被災。避難を余儀なくされ、震災による地盤沈下や津波による塩害で米作は厳しくなった。

 窮地に追い込まれた鈴木社長だが、「これを機会に何か違うことができないか」と考えた。そこで目を付けたのが、ITによる情報管理などで生産性を向上させるオランダ式の施設園芸。鈴木社長は会社経営を手助けしてもらうため、以前から面識のあった阿部さんを誘った。

 オランダ式の施設園芸はハウス内の温度や日照時間といった膨大なデータを分析し、生産性を向上させる。廃材などの木材や地熱といった再生エネを燃料に活用。そこに「台風などに備えて、ハウスの柱を太くするといった日本ならではのアレンジ」を加えた。現在はトマトとパプリカを効率的に生産している。

 20年の実績でトマトの収量は480トン、パプリカは同300トン。さらに21年5月には、もう一つの農場が完成するなど、着実に収量を伸ばしている。将来的には大きさや形が整わないなどの理由で市場に出回らない規格外の農産品を加工し、「ジュースやピザなどを提供するカフェを出店できれば」と構想を練っている。

 デ・リーフデ北上は、被災というピンチをチャンスに変えた。新しい農業に踏み出すことで、グループ会社を含め約100人の雇用を生み出した。現在の役職は総務部部長。「災害はどこで起こるか分からない。人やモノを一カ所に集中するのではなく、新たな産業の創出で地方に雇用を分散させることも大切だ」。震災で得た教訓を胸に、今後も会社を支えていく。(大柳聡庸)

 【あべ・じゅんいち】 73年12月生まれ。コンサルタント業務などに従事していたが、東日本大震災の被災を機に創業した「デ・リーフデ北上」の鈴木嘉悦郎社長に誘われる形で、16年に入社。総務部の部長として、トマトとパプリカの生産販売を手掛ける同社の経営の一端を担う。

copyright (c) Sankei Digital All rights reserved.