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» 2021年09月10日 07時00分 公開

五輪開会式で注目のドローン、パイロット育成や活用の現状を聞く スカイエステート・青木達也社長

東京五輪開会式で、空中に大会エンブレムや巨大な地球の姿を形成し世界を驚かせたドローン。この新技術を活用した建物の外壁調査やパイロットの育成事業を手掛けるベンチャー企業、スカイエステートの青木達也社長に、パイロット育成やドローン活用の現状を聞く。

[ZAKZAK]
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 まさに未来を担う技術だ。東京五輪開会式で、空中に大会エンブレムや巨大な地球の姿を形成し世界を驚かせたドローン。この新技術を活用した建物の外壁調査やパイロットの育成事業を手掛けるベンチャー企業だ。銀行、出版社と異色の経歴を歩んできた社長は、2011年の東日本大震災で被災した経験をきっかけに、自らの社会貢献の在り方を空に託した。(内藤怜央)

photo スカイエステートの青木達也社長=29日、東京都江戸川区(飯田英男撮影)

 −−2016年に開校した「Drone Biz School(ドローンビジネススクール)東京校」(東京都江戸川区)は、東京23区内で最大規模の練習施設を持つドローンスクールだとか

photo 社員とのひとこま(中央)

 「1つの練習スペースにつき幅、奥行き、高さともに10mの広い空間を用意しています。もともとは町工場だった建物をそのまま活用しました。現在、国土交通省から認定を受けているドローンスクールは約900といわれますが、多くは毎回練習場所を探す形で運営され、練習場を常設するスクールはおよそ1割にとどまるといわれています」

 −−スクールの受講生は、どのように技術を生かすのでしょうか

 「卒業生は1500人以上で、個人事業主や副業人材としては、ドローンを使った映像撮影や建物の外壁調査に携わる人も多いです。ドローンを用いた点検技術のノウハウを内製化したい法人からの相談も多く、太陽光パネルの設置業者には、社員がパネル点検にドローンを活用できるよう現地でOJT(オン・ザ・ジョブ・トレーニング)を実施しました」

 −−ドローン教習の工夫点は

 「やはり安全第一です。ドローンの中には、7kgの機体もあり、落下すれば人が負傷するリスクもあります。こうしたリスク回避を教えるため、教習では1つのドローンに対して講師と受講生がそれぞれリモコンを持つ工夫をしています。受講生が操縦するドローンに危ない動きがあれば、講師が電波を預かって操縦を替わる仕組みです。1つのリモコンで講習を行う場合、危ない動きがあれば講師が生徒のリモコンを奪って対処しますが、受講生が危険な場面での対応を学ぶことができない。生徒がぎりぎりまでトラブルに対処し危険を学ぶことを重視しています」

 −−もう1つの事業の軸が外壁などの調査業務です。ドローンを活用する利点は

 「人が目視や打診で外壁を点検する形が一般的でしたが、ドローンを活用することで調査コストを削減したり、調査員が転落するリスクをなくすことができます。ドローンに赤外線カメラを搭載することで外壁の内側の劣化も確認できます」

 −−調査事例として、東急百貨店本店(東京都渋谷区)や伊勢丹新宿店(新宿区)など大手企業の案件が増えました

 「大手ホテルチェーンの東横インが運営するホテルでも調査を行ったほか、日鉄興和不動産とは今年、ドローン活用に関わる業務提携も結びました。ドローンを扱うベンチャー企業って、ふつうは何者か分からないですよね。大手企業で導入が進めば、ほかの企業にとっても検討の動機づけになります」

 −−今後の展望は

 「スクールと外壁調査は今後も軸になります。目の前にある課題を解決する仕事なので、そこはしっかりとやる。中長期的には、ドローンパイロットと企業をマッチングするプラットフォーム作りです。現在運営してるアプリ『SORAeMON』(ソラエモン)には、ドローン操縦の認定資格を持つパイロットが登録しており、どんな地域でどんなドローンを運転しているかなど詳細にプロフィールに入力します。弊社でクライアントから預かった案件をアプリ内で発信し、パイロットから受注を募るという仕組みです。個人で受講していた卒業生は、その後の仕事が多くありません。ならばプラットフォームを作って自ら仕事を回そうという考えです」

 【会社メモ】ドローンを活用した外壁や太陽光パネルの調査、空撮や測量業務のほか、ドローンスクールの運営を行う。2016年9月創業。17年5月から外壁調査業務を本格的に開始した。人が調査する従来の方法と比べ、調査時間が3分の1、費用が4分の1に削減できることから問い合わせが増加。現在までに265棟以上の調査実績がある。20年の売上高は約2億円、従業員数12人。

 【東日本大震災】宮城県内で銀行員として働いていた2011年に東日本大震災を経験した。その時の経験がドローン事業に飛び込む1つの動機となった。

 「最初に配属された支店は津波に流されてしまいました。震災当時勤務していた内陸の支店も震度7を観測しました。津波を受けた町では防災無線が壊れて住民にうまく伝わらなかったと聞いています。内陸でも、普段見ていたビルの外壁が崩落していましたが、人が調べるため調査が追いつかない現状もあったようです。ドローンと出会ったとき、防災無線に代わるアナウンスや外壁調査を担える技術なんじゃないかと思ったんです」

 【コーヒー】趣味は野球観戦というが、観戦の際にはビールではなくコーヒーを飲む。

 「酒を飲むと寝てしまうのでコーヒーをよく飲んでいます。デーゲームが好きで、青空の下でコーヒーを飲む時間が幸せです。会社にも道具を用意して、自分で豆をひいて淹れますが、社員に振る舞うこともありますね。休日には、気になるコーヒー店を見つけて家族と出かけます」

 【社員との交流】社内ではムードメーカーとして積極的に社員と会話しているが、本来の性格は人見知りだという。

 「会社員のころは寡黙に仕事をしていました。ただ社長の立場で黙っていたら社員も働きにくい。その影響は自分に返ってきます。従業員12人の小さな会社なので、いい雰囲気が醸成されるようあえて無駄話もします。社長は孤独だといわれますが社内でコミュニケーションを頻繁に取ればミスにも早く対応できるし、営業で社員が悩んでいれば私も元営業ですから悩みに乗れる部分もあると思います。ムードメーカーを演じていますね」

 【読書】出版社勤務という経歴もあり、読書は習慣化している。「最近は健康とか、マインドフルネスとかライフハックというジャンルも読みます」

 好きな本は、ディー・エヌ・エー(DeNA)の南場智子会長の『不格好経営』(日本経済新聞出版)。

 「DeNAでも立ち上げ当初は紆余(うよ)曲折で、資金難に奔走する様子などを読んでいると自分自身も後押しされているような気持ちになります」

 ■青木達也(あおき・たつや)1984年9月1日生まれ、37歳。宮城県出身。山形大学を卒業後、2008年に七十七銀行に入行。11年に宮城県内で東日本大震災を経験する。13年に幻冬舎メディアコンサルティングに営業職で中途入社。17年4月にスカイエステートに入社し、代表取締役社長に就任する。

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