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» 2021年09月16日 07時00分 公開

オンラインで集中治療室の新生児と面会 コロナ禍で育む家族の絆

新型コロナウイルスの感染拡大により、病院では全国的に院内感染防止のための面会制限が続いている。生まれたばかりの新生児と母親も例外ではない中、大阪大学医学部付属病院は、集中治療を受けている新生児と家族をオンライン面会でつなぐシステムを本格稼働させた。8月中には全家族の毎日の面会が実現、離れていても絆を育む助けとなっている。

[産経新聞]
産経新聞

 新型コロナウイルスの感染拡大により、病院では全国的に院内感染防止のための面会制限が続いている。生まれたばかりの新生児と母親も例外ではない中、大阪大学医学部付属病院(大阪府吹田市)は、集中治療を受けている新生児と家族をオンライン面会でつなぐシステムを本格稼働させた。8月中には全家族の毎日の面会が実現、離れていても絆を育む助けとなっている。(地主明世)

photo オンライン面会する来間さん一家と長男の龍太郎ちゃん(大阪大学医学部付属病院提供)

 「こんにちは。写っていますか? 今日は(ミルクを)よく飲むね」

 新生児集中治療室(NICU)での高度集中治療で状態が安定した乳児が移る治療回復室。哺乳瓶を持った看護師がカメラに向かって語りかけると、モニター画面に写る母親と祖母が、顔をほころばせた。

 同病院のオンライン面会の一こまだ。予約制で、1家族1日30分まで利用可能。現在は入院する子供の全家族が毎日利用している。わが子が眠る様子を眺めるだけでなく、看護師がミルクを与えたり入浴させたりする様子などを見守りながら、癖や喜ぶあやし方など育てるポイントを聞くこともできる。

 両親の「24時間面会」を掲げ、祖父母やきょうだいの面会も積極的に実施してきた。同病院総合周産期母子医療センターの北畠康司医師は「赤ちゃんにとって、面会は治療の一環。抱っこしたりすることで、家族の一員として絆を育むことができる」と面会の意義を説明する。

 コロナ以前のNICUは、仕事を終えた父親が夜間に子供の様子を見に来ることもあった。だが、2020年4月に最初の緊急事態宣言が発令されると、面会は一時全面禁止に。ともに入院していた母親であっても、退院すれば入院中のわが子には会えなくなった。

 そこで検討したのがオンライン面会システムの構築。ただ、病院では膨大な個人情報を保持しており、セキュリティーの面から既存サービスは使えない。ならば独自システムを構築しようと、インターネットのクラウドファンディングで寄付を募り、約3000万円を調達。赤ちゃんのいるNICU内の保育器をカメラに写し、事前登録した家族が二段階認証でログインして面会したり、看護師が撮影した画像をダウンロードしたりできるシステムを作り上げた。

 8月中旬に第1子を出産し、オンライン面会を続ける来間(くるま)香澄さんは、夫のコロナ感染が判明した翌日に自宅で破水。当初から出産予定だった同病院に救急搬送され、その後のPCR検査では、自身の陽性も明らかになった。

 急きょ、帝王切開で出産した龍太郎ちゃんの体重は1910g。出産前の検査で心臓の持病が判明していたこともあり、今もNICUでの治療が続く。来間さんは「会えたのは出産直後の一瞬だけ。オンライン面会がなかったら、子供を産んだ実感を持てず、もっと不安だったと思う」とした上で、「今は子供を見るたび『ちゃんと動いている。頑張って生きている』と感じられる」と話した。

 北畠医師は「オンライン面会を重ねることで、家族も退院後の生活をイメージしやすくなる。コロナ後も活用できるシステムとして、他の病院にも広がってほしい」と話した。

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