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» 2021年09月21日 07時00分 公開

漁港から15分 「空飛ぶカツオ」ドローン直送

釣れたてのカツオを、ドローンで漁港からレストランに直送する実証実験を、ソフトバンクが「ケンケン鰹」のブランドで知られる産地、和歌山県すさみ町で実施した。実用化に向けては法整備などの課題もあるが、関係者は「漁業の流通スタイルが変わる」と期待を寄せる。

[産経新聞]
産経新聞

 釣れたてのカツオを、ドローンで漁港からレストランに直送する実証実験を、ソフトバンクが「ケンケン鰹」のブランドで知られる産地、和歌山県すさみ町で実施した。スマートフォンで注文すると、“空飛ぶカツオ”は15分ほどで到着。早速刺し身にしてふるまわれ、抜群の鮮度に感嘆の声が上がった。実用化に向けては法整備などの課題もあるが、関係者は「漁業の流通スタイルが変わる」と期待を寄せる。

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 実証実験は、ドローン関連事業も手掛けるソフトバンクが、町などの協力を得て企画。カツオ漁船が戻る見老津(みろづ)漁港から東に約3km離れた道の駅「すさみ」のレストラン「すさみ夜市」へ、釣れたばかりのカツオの空輸を試みた。

 まずはレストランがスマートフォンを使い、キャッシュレス決済で注文。受注した見老津漁港側では、漁師らが漁船から水揚げしたばかりの重さ約3.5kmのカツオを箱詰めし、ドローンに搭載して飛ばした。

 ドローンは自動運行で、海岸沿いの高度70mのルートを時速30kmほどで飛行。無事、道の駅の敷地内の一角に到着した。カツオは早速レストランの料理人にさばかれ、刺し身として実証実験の参加者にふるまわれた。参加者は鮮度抜群のカツオに舌鼓を打った。

 元漁師という岩田勉(つとむ)町長も立ち会い、「こんなに新鮮なカツオは、漁師でもなかなか食べられない。観光客もびっくりするはず」と太鼓判を押した。

「足が早い」課題を解決

 町は、太平洋に面した紀伊半島南端に位置。古くから、小型漁船のさおから釣り糸で擬餌(ぎじ)針をたらし、船を走らせ餌が泳いでいるようにみせてカツオを1匹ずつ釣りあげる「ケンケン漁」で知られる。

 一般的な巻き網漁法などと比べてカツオに傷がつきにくいほか、釣り上げると直ちに活け締めして血抜きし、氷水で保存するため、鮮度は抜群。06年には「すさみケンケン鰹」として特許庁に地域団体商標として登録され、町がブランド化を進めている。

 一方、カツオはもともと「足が速い」(鮮度が落ちやすい)とされ、流通面に課題があった。

 同町では漁港は土曜が休みで、土曜に釣れたカツオは翌日以降の出荷になる。日曜には土曜と日曜の分が合わせてセリに出されるため、通常の半値以下になってしまうという。

 また道の駅のレストラン側も、利用客が平日の約3倍に増える土曜にカツオの入荷がなく、町の特産品にもかかわらず、新鮮なカツオの刺し身を提供できなかった。

 そんな課題を一気に解決しようというのが、今回の実証実験の狙いだ。

未来型ビジネスへの第一歩

 実証実験ではオンラインによる発注・受注、決済、ドローンによる輸送、顧客への提供まで、一連の流れを検証。すべてが順調で、ドローンが事前にプログラムしたルートで正確に飛行することも確認できた。

 地元の漁師、今村喜代人さんは「より良い状態で販売でき、漁師の収入も増える。これが実現すれば、漁業が変わる」と期待を寄せる。

 ただ現状では、ドローンを活用する場合、安全性の観点から、操縦者や補助者による目視ができない場合の飛行は基本的に認められていない。実際にビジネスとして軌道に乗せるには今後、官民を挙げて関連法令の整備や技術向上などに取り組む必要がある。

 実証実験は、そんな未来型ビジネスの実現に向けた第一歩となる。ソフトバンクの担当者は「ドローンは災害時の物資や山間部の医薬品など、さまざまなシーンで輸送に活用できる。ドローンで地域の発展や課題解決に取り組んでいきたい」と意欲をみせる。(前川康二)

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