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» 2021年10月26日 07時00分 公開

ドローンなど使い保守・点検高度化 東京メトロ、タブレットで業務効率化

高い安全性で世界から称賛を集める日本の鉄道だが、近年では設備の老朽化や人手不足が課題になっている。東京メトロではこうした課題解決の切り札として最先端のデジタル技術を早期に導入。その先駆的な取り組みは他社への応用展開も期待されている。

[産経新聞]
産経新聞

 正確な運行、高い安全性で世界から称賛を集める日本の鉄道は、各社の緻密な保守・点検が支えている。路線維持に欠かせない保守・点検だが、近年では少子高齢化に伴う人手不足や熟練技術者の減少などが浮き彫りになっており、対応を迫られている。特にトンネル保守が難しいとされる中、アジア最古の地下鉄「銀座線」を運行する東京地下鉄(東京メトロ)では老朽化も進む。同社はこうした課題解決の切り札として最先端のデジタル技術を早期に導入。その先駆的な取り組みは他社への応用展開も期待されている。

photo 東京メトロ半蔵門線トンネル内で球状のドローンを使って上部を点検している様子

 首都・東京に張り巡らされた東京メトロ9路線の総延長は195km。新型コロナウイルス禍の影響を強く受けた2020年度でも私鉄最大の1日当たり平均約500万人が利用した巨大鉄道網だ。

 その線路の85%は地下のトンネル内にある。このため、同社にとってトンネルの維持管理は極めて重要な作業となる。

 「トンネル内は作業空間が狭く、足場の設置スペースなどの確保に手間取る。作業は終電後から始発前までで、正味1時間半しか時間がない」(小西真治・鉄道本部工務部土木担当部長)

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 過酷な作業環境の中、日常的な点検や補修を行い、長期的な保全を実施する。しかも、構造物の約60%は建設から50年以上経過。作業人員も減少傾向にあり、維持管理の効率化が大きな課題となっている。

 同社はこの課題解決にデジタル技術を使う。21年からはトンネルの点検に、自動飛行やデータ伝送機能などIT装備のドローン(小型無人機)を導入した。これにより、「徒歩による点検で高所にひび割れなどが疑われる箇所を発見した場合、その場でドローンを使って確認。後日足場を設置して再調査する手間がなくなった」(小西氏)

 他にも専用のアプリケーションソフトを搭載したタブレット端末を使用する。漏水やひび割れ、浮き、鋼材劣化などの「変状」を見つけた場合は端末で写真を撮り、位置と変状の内容や程度を入力する。「写真を撮って点検シートに手書きで記入し、事務所に持ち帰ってPCに入力していた従前に比べると、業務量は5分の1程度に減った」(同)

 さらに、タブレット端末で入力されたデータは翌日には確認できるため、「3カ月かけて作成していた大規模修繕を検討する分析会議の資料作成も不要になった」(鉄道本部工務部土木課の布村忠之氏)という。

 同社は今後、デジタル技術の活用による保守の効率化と高度化を加速する。データ分析の専門家やドローン操縦士の育成の他、人工知能(AI)を使った保守技術の伝承などを始める。「単純作業に費やす時間を減らしつつ、点検や分析を高度化する。効率化によって考える時間を生み出し、将来にわたっての安心・安全を検討、追求していく」(小西氏)構えだ。

 保守や安全対策へのデジタル技術の活用はJR各社や多くの私鉄で始まっている。

 東急電鉄は住友商事、富士通と共同で、12月から地域限定の高速通信規格「ローカル5G」を活用した線路の異常検知や、運転支援業務に関する実証実験を始める。実験では、列車やホームに設置した高精細な4Kカメラで撮影した映像をローカル5Gで伝送しAIで解析、運転士に「正常・異常」を通知する。実験結果を踏まえ駅員が目視で行う線路巡視業務や車両ドア閉扉合図業務と併用する。

 将来にわたって鉄道施設の安全性を保つためには、維持管理の向上と、より高い効率性が求められる。デジタル技術は、それを実現する有力なツールになりつつある。(青山博美)


人員減や自然災害対策、脱炭素化など多くの経営課題に直面する鉄道産業。サービス強化や技術革新に向けた取り組みなどを随時取り上げる。


鉄道技術展の開催概要

開催期間:11月24日(水)〜26日(金)。午前10時から午後5時まで。

場所:幕張メッセ(千葉市美浜区)

主催:産経新聞社

後援:国土交通省、経済産業省、文部科学省、千葉県、千葉市など

【第7回鉄道技術展】公式Webサイト

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