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» 2021年10月27日 07時00分 公開

一票の価値 ネット投票、コロナ禍で高まる待望論

新型コロナウイルスの収束が見えぬ中、「インターネット投票」に関心を持つ人は多い。開票作業のスピード化、投票の利便性の向上も期待できるとあって総務省は2020年、ネット投票の実証実験も実施したが、実現にはまだハードルがある。

[産経新聞]
産経新聞

 わざわざ投票所に行かなくても、スマートフォンや自宅のPCから投票ができないのか。そんな思いを持つ人も少なくないだろう。新型コロナウイルスの収束が見えぬ中、「インターネット投票」に関心を持つ人は多い。開票作業のスピード化、投票の利便性の向上も期待できるとあって総務省は2020年、ネット投票の実証実験も実施したが、実現にはまだハードルがあるようだ。専門家は「技術的な問題はクリアできた」とするが、いったい何が障壁になっているのか。

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 総務省が20年冬に実施したネット投票の実証実験では、投票は2分ほどで完了した。作業はシンプルだ。(1)スマホで投票システムにアクセス(1)マイナンバーカードで本人確認(3)画面に映し出された候補者名や政党名を選択――。

 東京都世田谷区や和歌山県有田川町など5自治体が参加し、現地の選挙管理委員会が投票から開票までの流れを確認した。

 ただ実証実験は、海外在住の邦人による「在外投票」への導入を想定したもの。投票のため領事館に出向くなどの制約がある在外投票を巡っては、毎回20%前後にとどまる低い投票率が懸案だった。総務省の有識者研究会が18年、まずは在外投票でのネット投票導入を提言した経緯がある。

 有識者研究会で検討を重ねた明治大の湯浅墾道(はるみち)教授(情報法)は実証実験を評価。「技術的問題はクリアし、導入への機は熟した」と語る。

セキュリティに不安

 障壁となっているのは、システムへの不安感だ。

 例えば、サイバー攻撃や不正アクセスを受ければ、投票結果が外部から書き換えられる恐れがある。厳重な防御システム構築はネット投票導入の必須条件だ。

 コロナ禍では官民のあらゆる分野でデジタル化が進んだが、目を疑うような事態も続出した。例えば昨春の一律10万円給付事業。オンライン申請でトラブルが相次ぎ、受け付けをやめた自治体もあった。

 技術的課題はクリアされつつあるとはいえ、「もし失敗したら」という不安感は根強い。選挙は公正・公平が大原則だ。大きなミスが起きれば信頼回復は容易ではない。実現に踏み切れない背景には、そうした思いも見え隠れする。

 投票方法の変更は選挙制度の根幹を変えることを意味し、公職選挙法の改正なども必要だ。総務省の担当者も、実証実験後の展開や在外投票の導入時期については「未定」と慎重姿勢を崩さない。

 だが、有識者研究会の湯浅氏は、ネット投票の意義を強調したうえで「リスクはネットにもリアルの投票にもある。投票率低下の問題に目を向け、誰もが投票しやすい環境を整備すべきだ」と力を込める。

海外でも限定的

 コロナ禍の長期化に伴い、ネット投票実現を求める声は高まっている。

 業界関係者らで作る「日本IT団体連盟」(東京)は20年、コロナ感染者や濃厚接触者を対象に特例としてネット投票を認めるよう政府に求めた。「コロナ対策と公正な選挙の両立は、民主主義を堅持するために必要不可欠」という。

 天候や災害に左右されないという強みも注目されている。人口減や職員不足から投票所削減の動きがある中、移動が困難な高齢者や介助が必要な「投票弱者」の投票行動を支える可能性にも期待が集まる。

 一方、海外の先行例をみると、欧州のバルト3国の一つのエストニアは、国政と地方選で全面的にネット投票を導入しているが、ほとんどのケースは一部の州や在外投票に限り検討、導入が進められている段階だ。

 ネット投票に詳しい情報通信総合研究所(東京)の水野秀幸主任研究員は、海外でも「まだ全国投票への導入には否定的なのが現状」とし、まず小規模な在外投票を行い、それが安定運用できるかがカギになるとみる。

 超党派の議員連盟からも、ネット投票の導入を求める声が出ている。待望論が高まる今こそ、本格議論の契機かもしれない。(石川有紀)

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