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» 2021年10月29日 07時00分 公開

兼松 決裁電子化&電子会議システムを構築 テレワークのため社内規定そのものを見直し、業務を効率化

総合商社の兼松は2021年4月から、テレワークの導入をきっかけに紙の申請書や押印による決裁をデジタル化し、役員会議もタブレット上で行えるようにした。電子化により年間約14万枚の紙を削減できたなど、コスト削減にも寄与した。

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 新型コロナウイルスの感染拡大とともにテレワークが浸透する中、「ハンコ問題」が浮き彫りになった。契約書や請求書などの書類に複数の上司や社員の押印が必要な場合、その作業のために出社しなければならないケースが多かった。だが、ここにきて企業の脱ハンコが進んでいる。

photo 役員会議用タブレット

 総合商社の兼松は2021年4月から、紙の申請書や押印による決裁をデジタル化し、役員会議もタブレット上で行えるようにした。

 それまで、毎年数千から1万件の、投資案件や物品購入などの紙の決裁申請書を社内で回覧、責任者が押印するスタンプラリーが続いていた。役員会議も、PDFデータに変換した紙の申請書をPCで見ながら討議していた。しかし、20年4月からテレワークを段階的に導入、出社率が約2割となり、決裁申請書の電子化が待ったなしになった。

 まずは社内規定そのものを見直し、ルールのスリム化を図った。また、明文化されていない暗黙のルールや部門間の運用のバラつきを明らかにして業務の効率化を検討。それまで約3000パターンあった決裁ルートを600パターンに絞り込む。

 決裁電子化プロジェクト推進の中心的役割を担っているのが、IT企画部の宮内桃子さんだ。テレワークでの紙問題を解決する対策は、実はコロナ前から着々と進めていたという。

photo IT企画部の宮内桃子さん

 22年に東京本社ビルを港区芝浦から千代田区丸の内のJPタワーに移転することが決まっていたため、書類量の削減を目的に、IT企画部が決裁電子化プロジェクトの準備を19年から始めていたからだ。

 ゴールは、決裁システムの構築と、役員会議で最終審議する決裁申請書をタブレットで一覧できる電子会議システムの構築だった。

 「協力会社とのシステム作りの打ち合わせは、半年以上全てオンラインで行った」と宮内さん。感染防止の目的はもとより、移動時間を、開発や資料作成の時間に充ててもらった方が効率的と判断したためだ。実際、開発が終わるまでスタッフ同士が顔を合わせたのは、プロジェクトのキックオフミーティングの1回だけ。これまで経験した開発案件では初の試みだったが、オンラインでも相手を気遣いながらコミュニケーションを図れば、何ら問題ないことが証明できた。

 電子化はコスト削減にもつながった。決裁申請書には何枚もの資料が添付されていたが、電子化されたことで、年間約14万枚の紙を削減することができた。

 役員会では、最終審議する決裁申請書を役員一人一人がタブレット一覧できる電子会議システムが整い、役員は自宅や出社しても別の部屋から会議に参加できるようになった。

 出社率は現在、約3割。10月、第2子が誕生する予定の宮内さんはたまに出社した時は、「上司からは『一瞬でお腹が大きくなったわね』と言われた。オンライン会議では分かりませんから」。

 デジタル化がキーワードの今、「ITの専任部門がいらないぐらいそれぞれの部門がIT化を推進し、お客さまも兼松もハッピーになることを願っている」と夢を語った。 (危機管理・広報コンサルタント 山本ヒロ子)


 ■兼松 1889年日豪貿易の先駆けとして創業。電子・デバイス、食料、鉄鋼・素材・プラント、車両・航空分野でグローバルに事業展開。2018年から、上肢、下肢の切断障害がある選手がプレーする「アンプティサッカー」を支援。連結従業員数7296人。収益6491億4200万円(連、21年3月期実績)。代表取締役社長/宮部佳也。

 ■宮内桃子(みやうち・ももこ)  2008年早大卒、兼松入社。欧州、東南アジアなど海外現地法人の基幹システム刷新プロジェクトや、東京本社の貿易・物流システムの入れ替えなどに携わる。17年産休後、IT企画部。19年から社内決裁申請業務の電子化プロジェクトリーダー。「社員や協力会社とのコミュニケーションが図れて働きがいを感じている」。36歳。

 ■山本ヒロ子(やまもと・ひろこ) 早大卒。40年以上にわたり、企業や自治体、大学の危機管理と広報活動について取材。コンサルティング活動も行ってきた。取材件数は延べ2000社以上にのぼる。経営情報学修士(MBA)。

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