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» 2021年11月01日 07時00分 公開

海運業界もデジタル化の波 老舗の本瓦造船

海運業界で、デジタル機器を搭載して作業負担を減らす内航船の建造や、コンピュータで自動車の積み方を最適化する動きなどが活発化している。海運業のデジタル化は他業種に比べて遅れていたが、慢性的な人員不足や高齢化に対処していくため本腰を入れ始めている。

[産経新聞]
産経新聞

 海運業界にもデジタル化の波が押し寄せてきた。デジタル機器を搭載して作業負担を減らす次世代内航船の建造や、高速コンピュータを使って、自動車の積み方を最適化する動きなどが活発化している。海運業のデジタル化は他業種に比べて遅れていたが、慢性的な人員不足や高齢化に対処していくため本腰を入れ始めている。

photo 「りゅうと」の操舵室には荷役業務などを遠隔操作できるタッチパネルが搭載されている(本瓦造船提供)

 2021年5月末に瀬戸内海のほぼ中央にある広島・福山港(福山市)で国内貨物を運ぶ「内航船」が竣工(しゅんこう)した。全長40m、幅8m、総トン数約199トンの液体化学薬品を運搬する小型タンカー「りゅうと」だ。創業から70年超の歴史を持つ本瓦(ほんがわら)造船(同)が、冨士汽船(山口県周南市)向けに建造した「次世代デジタル内航船」で、荷役作業などのデータを統合・蓄積する小型サーバを搭載し、最新技術が導入された。

 その1つが「集中荷役遠隔システム」だ。荷役作業に関するさまざまな機器を連動させることで、通常は3、4人で行う荷物の積み降ろしを操舵(そうだ)室にあるタッチパネルを使って1人で行えるようにした。例えば、運ぶ液体の量を調整するバルブを回す作業は手動で長時間かかったが、操舵室でできる。

 この他、陸上から荷役作業をオンラインで監視できるシステムも取り入れた。船員が岸との距離などを目測しながら、いかりやロープを巻き上げる「ウインチ」を使った接岸作業もカメラやセンサーを取り付けることで、操舵室でモニターを見ながらできるようにした。

photo 操舵室に設置されたタッチパネル(本瓦造船提供)

 酷暑・極寒下で危険の伴う甲板作業などがある内航船は船員不足や高齢化が課題になっている。国土交通省の19年の調査によると、国内の内航船の船員は約2万8400人。年齢構成は60代以上が24%、50代以上だとほぼ半数の46%を占めている。次世代デジタル船はこれらの解決策として期待される。

 りゅうと竣工後、本瓦造船には問い合わせが増えているという。「22年中に多品目を積載する船に対応した新しいシステムを完成させる。さらにデジタル化を進めたい」(恩田桂希取締役)と意気込む。

 中小型が多い内航船に積むサーバなどデジタル機器は小型化が進み、データも含め標準化され扱いやすくなってきた。日本舶用工業会の安藤昇専務理事は「国際機関に働き掛けて、標準化が進んだ。データが蓄積されれば、活用の可能性が広がる」と期待する。

 外航船もデジタル技術を活用する余地は多いとみられる。日本郵船は自動車専用船の積み付け計画業務を効率化するため、富士通の高速コンピュータを導入し、9月から試験運用を始めた。車の運搬は車種や寄港地が多岐にわたり、積み方の計画づくりに手間がかかる。専門人員が1隻当たり最大約6時間かけて計画を作成していたが、2時間半に短縮し、年間約4000時間の労働時間削減につなげる。22年4月の本格運用を目指す。

 商船三井も大阪大学の協力を得て人工知能(AI)を活用した同様の計画支援システムの運用を始めている。海運業界では作業効率を改善するためデジタル化を推進する機運が高まっている。(黄金崎元)

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