ITmedia NEWS > 社会とIT >
ニュース
» 2021年11月18日 07時00分 公開

低年齢化するSNS性暴力被害 略取誘拐のツールに

近年、少子化で子供が被害に遭う事件は全体的には減っているが、SNS起因の略取誘拐事件が増加している。識者は「ネット空間への対処が急務」と警鐘を鳴らす。

[産経新聞]
産経新聞

 奈良市で2004年、市立富雄北(とみおきた)小学校1年の有山楓(かえで)ちゃん=当時(7)=が誘拐、殺害された事件は11月17日で発生から17年となる。登下校時を狙った連れ去りの手口に加え、近年はスマートフォンを持つ小学生が増え、会員制交流サイト(SNS)を通じて犯罪に巻き込まれるケースが少なくない。少子化で子供が被害に遭う事件は全体的には減っているが、こうしたSNS起因の略取誘拐事件は増加しており、識者は「ネット空間への対処が急務」と警鐘を鳴らす。

photo

アプリ通じて接近

 「体が発達していない女の子にすごく興味がある」。周囲にこう話していた男(32)は21年1月、SNSの会話アプリで知り合った愛知県内の14歳の少女を誘拐したとして、未成年者誘拐罪で懲役1年10月の実刑判決を受けた。

 捜査関係者によると、男は6年前にも、奈良県内のリサイクルショップのトイレで当時小学6年の女児をかばんに押し込み、車で連れ去ったとして懲役4年の実刑を言い渡され、服役していた。出所後の今回は、SNSを通じて家出願望があった少女に接近、自分の元に来るよう誘い、約1カ月間、奈良市内の自宅で寝泊まりさせていた。

 「泊めてほしいと言った私も悪い」。保護された後、少女はSNSのやりとりを悔やんでいたという。

群がる大人

 デジタル性暴力の被害者支援に取り組むNPO法人「ぱっぷす」(東京)は21年8月、SNSでの性被害の実態調査を実施した。Twitterで「甘い物が好きな14歳の女子中学生」の設定で架空のアカウントを作ったところ、2カ月で170人以上の大人たちからメッセージが殺到、大半が性的な行為を求めてきた。

 多くのSNSでは、13歳未満の子供の使用を認めないか、保護者の同意が必要としているが、同NPO理事長の金尻(かなじり)カズナさん(40)は「本人認証の機能や規制が緩いサイトもあり、性犯罪の温床になりかねない」と話す。

 オンラインゲームのチャット機能を使って知り合い、わいせつな写真を要求される事例も。金尻さんは「『何で会えないの?』『どうしてだめなの?』とたたみかけられると、子供は自分が悪いと感じ、嫌われたくないと応じてしまう場合がある」と指摘。矢継ぎ早のチャットの書き込みにより子供が心理的に追い込まれるというSNSのリスクに言及した。

 NPO法人「人身取引被害者サポートセンターライトハウス」(東京)の担当者によると、ここ1、2年で以前はなかった小学生高学年からの相談も来るようになった。被害を認識していなかったり言い出せなかったりする子供も多いとみられ、担当者は「表に出ている被害は氷山の一角では」と懸念する。

小学生、5年間で倍増

 警察庁によると、13歳未満の子供が被害者となる犯罪の認知件数は年々減少。一方、その内訳をみると「略取誘拐」の被害件数は逆に増加している。19年は114件に上り、過去10年間で最多に。2年も同数だった。

photo

 SNSをきっかけに被害に遭う18歳未満の子供は平成25年から増加傾向で、警察庁のまとめでは20年は1819人。うち小学生の被害は84人で、5年間で倍増した。

 新型コロナウイルスの影響で孤独やストレスを感じ「SNSを使って現実逃避する子供も多い」と金尻さん。「小学生のうちからネット空間での性被害について教える機会をもっとつくるべきだ」とし、保護者には「トラブルになったとき子供が相談しやすい関係性を、普段から構築しておくことが重要だ」と訴えた。(田中一毅、前原彩希)

copyright (c) Sankei Digital All rights reserved.