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» 2021年11月29日 07時00分 公開

クマによる樹木被害、ドローンとAIで定量化 信州大

信州大農学部の加藤正人教授らは、クマが木の皮を剝ぐ「クマ剝ぎ」による樹木の被害をドローンを使って定量化する技術を開発し成果を公開した。上空から撮影した樹冠部の色で木が健全かどうかを判断し、被害状況を推定する仕組み。

[産経新聞]
産経新聞

 ICT(情報通信技術)を活用したスマート林業技術の研究開発に取り組む信州大農学部の加藤正人教授らは、クマが木の皮を剝ぐ「クマ剝ぎ」による樹木の被害をドローンを使って定量化する技術を開発し成果を公開した。上空から撮影した樹冠部の色で木が健全かどうかを判断し、被害状況を推定する仕組み。剝がされてから枯れるまでの時差などで誤差は出たものの、連携協定を結ぶ中部森林管理局北信森林管理署は「有効性と費用対効果をみた上で導入を考えたい」としており、将来の活用が期待できそうだ。

photo 飛行中のドローンから受信した森林の空撮画像。樹冠の色が木々により異なる=長野県信濃町の霊仙寺山国有林(原田成樹撮影)

出没頻度高まる

 国有林などの管理・利用計画を策定する際の基礎データとして、木材の資源量を正しく把握することは欠かせない。北信森林管理署は加藤教授らと2016年度から共同研究開発を実施。20年は、3次元レーザー計測装置で広葉樹ブナの数や太さを定量化する技術や、スギ苗木の成長をドローンで定量化する技術を公開している。

photo ドローンを飛ばす信州大の研究者=長野県信濃町(原田成樹撮影)

 一方で木材の品質の把握も重要な要素だ。人里でのクマ目撃が増加して問題となっているが、全国的にクマ剥ぎの被害も目立っている。長野県内でも、カモシカを警戒して設置したカメラにクマが映る頻度が高まっているという。

 クマ剥ぎの詳細は明らかではないが、冬眠から目覚めたクマが食べ物を求めて木の皮を剝いでいると考えられている。剝がれても木の成長は続くが、樹木の周囲を50%以上剝がれてしまうと、水を吸い上げられなくなり、数年後に枯れてしまうという論文もある。こうなると用材としては使えず、ウッドチップなど価値の低い用途にしか使えなくなる。

自動分類で8割一致

 加藤教授や大学生らは今回、同県信濃町にあるスギの人工林で、上空から見た樹冠の葉の色と実際の剝皮率との関係を人工知能(AI)に学習させた上で、ドローンで撮影した画像から木の剝皮率を推定させた。

 樹冠の位置は、航空測量による地物表面データと標高データの差から特定。色は、緑が健全で、白や赤になるほど被害の度合が進む。

 実際には皮が剝がされてから木が枯れるまでに一定の年月がかかるため、樹冠が緑なのに皮が剝がれている木などもあり、学習時にはこうした精度の低いデータは除去。剝皮率に応じた6段階の自動分類を行ったところ、目視による調査との一致度は8割程度で、剝皮率50%以上の木については100%の精度で一致した。

photo クマに皮を剝がれて枯れた樹木=長野県信濃町(原田成樹撮影)

クマの危害も回避

 21年6月の閣議決定で、5年ぶりに見直された「森林・林業基本計画」では、木材産業の競争力強化がうたわれている。ドローンを操作するだけなら山中に入らなくても林道から行うことができ、徒歩による調査と比較しても、時間を10分の1程度に減らせることができる。

 北信森林管理署では「足元が悪いなかでの現地調査を大幅に省くことができ、調査中にクマと出遭うリスクも減らせる」などと将来性に期待を示す。加藤教授は「マツ枯れやナラ枯れなどの調査にも応用したい」としている。(原田成樹)

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