ITmedia NEWS > 社会とIT >
ニュース
» 2022年01月13日 07時00分 公開

犯罪最前線 マッチングアプリで美人局 プチぼったくり暗躍

ぼったくりにマッチングアプリを悪用した新たな手口の被害が相次いでいる。ぼったくり店の女性従業員が無関係の一般女性を装いマッチングアプリで出会った男性を言葉巧みに店に誘導。請求額を10万円以下に抑えて通報されにくくするなど摘発逃れも巧妙化している。

[産経新聞]
産経新聞

 繁華街の飲食店で昔からあるトラブルといえば、高額な料金を不当に請求する「ぼったくり」だ。このぼったくりにマッチングアプリを悪用した新たな手口の被害が相次いでいる。ぼったくり店の女性従業員が無関係の一般女性を装いマッチングアプリで出会った男性を言葉巧みに店に誘導。請求額を10万円以下に抑えた「プチぼったくり」で通報されにくくするなど摘発逃れも巧妙化している。警視庁は同様の店が都内に20店ほどあるとみて警戒を強めている。

マッチングのはずが……

 「気になっているバーがあるから行ってみようよ」

 20代の男性会社員はマッチングアプリで知り合った女性(18)に誘われるがまま東京・歌舞伎町のバーに向かった。

 3階にある一見すると普通のバー。だが、メニュー表の端には小さく《チャージ料金2000円》《サービス料20%》などの表記が。女性は次々と高額なお酒を注文し続けた。

 少し飲んでから会計を頼むと、女性はクレジットカードで支払う素振りを見せたが、すかさず経営者の男が「カードは使えない」とすごんだ。現金を持っていないという女性の代わりに男性に提示された料金は約4万円。

 「ぼったくられた」

 男性は瞬時にそう思ったが、こわもての経営者の男のすごみのせいか、4万円という値段のせいか、悔しさを感じながらも支払いを済ませて店を後にした。

 実はこの女性は店の従業員。そしてマッチングアプリで女性のふりをしてやりとりをしていたのは経営者の男らだった。マッチングアプリを悪用して自然な出会いを装いながら巧みに店に誘導する手口だったのだ。

 さらに、請求額を10万円以下にして払えないほど高額とはいえない「プチぼったくり」にとどめたのも、通報や相談をしにくくするのも手口だった。

苦情30件以上

 マッチングアプリとぼったくりを組み合わせた手口で経営者の男は2021年9月以降、約4500万円を荒稼ぎしていた。店の実態は女性従業員が接待をするキャバクラだったにもかかわらず無許可で営業。警視庁は、風営法違反の疑いで21年11月、東京都新宿区歌舞伎町でこの「ぼったくり」バーを経営する男(23)と、10代を含む従業員の男女2人を逮捕した。

 マッチングアプリの性質上、男性は女性に好意的な感情を抱いて会うケースが多い。捜査関係者は「女性に頼まれたら断りづらいという男性心理を巧みに利用していたのではないか」と指摘する。

 この店については、20年9月以降「高額の請求をされた」などの苦情が新宿署に約30件も寄せられていた。被害者の中には、「ぼったくりだと気づいていなかった人もいるようだ」(捜査関係者)といい、実際の被害はより大きかったとみられる。

 警視庁はマッチングアプリを悪用したぼったくり店は都内に20店ほど確認しており、同様の手口が今後増える可能性もあるとして、警戒を強めている。

利用は慎重に

 手軽に異性との出合いの機会が得られることから、マッチングアプリの利用者は増えている。一方で、トラブルも増加している。

 調査会社のMMD研究所が21年実施したアンケートによると、マッチングアプリの利用経験がある男女500人のうち、何らかのトラブルに巻き込まれたことがあると答えた人は223人で、4割以上にも上る。

 実際に犯罪へ発展しているケースもあり、21年11月にはマッチングした男性を暗号資産投資へ誘い、ビットコインを詐取した男女6人が大阪府警などに逮捕されている。

 安全にマッチングアプリを利用するための注意点として、SNSや情報リテラシーに詳しい成蹊大の高橋暁子客員教授は「有料だったり、身分証による本人確認が必須だったりするアプリを選ぶことが効果的」と助言する。

 マッチングアプリには運営がずさんなものも多く、中でも無料のものや、本人確認が不要なものは詐欺や性的な目的などで利用する人が多くなる傾向にあるという。高橋氏は「やりとりを監視したり、報告機能を有しているなど、悪用への対策を行っているアプリを選ぶべきだ」と推奨する。

 異性とマッチングした後、簡単に相手を信用しないことも重要だ。しばらくはアプリ内でのやりとりにとどめたり、会う前にオンライン通話をしたりすることでも、犯罪に巻き込まれる危険性を下げられるという。

 高橋氏は「直接会う場合は昼間にしたり、人が多い場所を指定したりするのも手」とし、各利用者が慎重に行動することが大切だと話している。(根本和哉)

photo

copyright (c) Sankei Digital All rights reserved.