ニデック(旧日本電産)の永守重信・グローバルグループ代表は6月18日、定時株主総会後の記者会見で、冷却システムなどを中心としたAIデータセンター向けの事業について「私は1兆円規模になると思っている」との見方を示した。同社は電気自動車(EV)向けモーターシステムからAI関連へと軸足を移しており、永守氏は「まだまだ買わないといけない会社が日本にある」と述べ、企業の合併・買収(M&A)にも意欲を見せた。
同社はEV向けモーターシステムを新たな「柱」として中国でのシェア拡大を進めていたが、価格競争の激化を受けて昨年10月に拡大路線から収益性重視へと転換した。
一方、2024年4月、米サーバ大手と共同開発したデータセンター向けの水冷機器の生産能力を6月に現在の10倍に拡大すると発表。生成AIの普及によって急激に需要を伸ばしているAIデータセンター関連の事業に重点を置く方針を取っている。
株主総会でも株主から「水冷機器で世界一になれるのか」との質問が飛んだ。岸田光哉社長兼最高経営責任者(CEO)は「データセンターでは1滴でも水が漏れたら大変なことになる。高い技術が要求され、数社しか製造できない」と自社の技術力に自信を見せた。
また、会見で永守氏は4月に会長兼CEOを退任したことを振り返り、「どうも自分のやり方では売上高10兆円いかないなと感じ、新しい人に任せるしかないと思った」と、経営の一線を退く決断をした理由を語った。
同社の後継者問題は外部から複数の候補者を招くなど、約10年にわたって課題となっていたが、ソニー出身で副社長をつとめていた岸田氏を中心に据えた集団指導体制とすることで一応の決着がついた。永守氏は「今回こそ本物だ」と岸田氏に太鼓判を押した。(桑島浩任)
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