人間の皮膚から培養した細胞を使った、生きた皮膚を持つロボットの顔を開発したと、東京大の研究チームが発表した。論文が5月26日、米科学誌に掲載された。笑顔を作る実験にも成功し、医療や美容分野での応用が期待できるという。
研究チームはこれまでに、指型のロボットを皮膚細胞で覆うことに成功していたが、土台の突起に細胞を巻き付ける形で皮膚を固定していた。ロボットの顔部分に使うには見た目上の問題があった。
そこで今回の研究では、顔の骨格となる土台に垂直方向にV字の穴を開け、その中に潜り込ませるように細胞を培養して固定する新手法を開発した。人間の皮膚を筋肉や骨に固定する「皮膚支帯」と言われる構造にヒントを得たという。顔型の土台を真皮細胞と表皮細胞で覆うことに成功した。
さらに別の実験では、顔を模した皮膚細胞を新手法で固定した上で、土台の一部をモーターで動かし、笑顔を作る動きをさせた。口角を上げた際に頰が盛り上がる様も再現できた。
しわ形成の仕組みを解明したり、化粧品開発や薬剤の効能解析のモデルとして使ったりといった応用が考えられる。
東大の竹内昌治教授は、「(倫理上の理由から)動物を使った実験ができなくなり、よりリアルな皮膚モデルが求められている」と指摘。動く皮膚モデルでテストすることで、表情が動く人間の肌に近い環境で製品開発ができる可能性がある。
将来的には人間と見分けがつかないようなロボットの開発につなげたいとしている。
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