2025年大阪・関西万博の目玉となる「空飛ぶクルマ」に客を乗せて飛ぶ「商用運航」が危ぶまれている。すでに断念を発表しているスカイドライブ(愛知県豊田市)の福沢知浩最高経営責任者(CEO)は7月4日、技術的な課題が多くあり、必要な安全性を確保することが困難になったとの背景を明らかにした。その上で、客を乗せないデモフライトでも、空飛ぶクルマを実際に多くの来場者に見てもらうことは「大きな意義がある」と強調した。
スカイドライブは同日、東京都内でJR九州と空飛ぶクルマ運航に向けた連携協定を締結。福沢氏はその会見後に記者団の取材に応じた。
万博を運営する日本国際博覧会協会は、空飛ぶクルマの運航事業者としてスカイドライブのほか、ANAホールディングス(HD)や日本航空、丸紅の計4グループを決定。ANAHDは米ジョビー・アビエーションと共同で参画するほか、日航は独ボロコプター、丸紅が英バーティカル・エアロスペースの機体を使用する。
ただ、このうちスカイドライブが6月に商用運航の断念を発表。丸紅も商用運航を行わない方針を示している。残るANAHDと日航も実施方針を明確にしておらず、万博で実際に客を乗せた空飛ぶクルマの運航が行われるかは不透明な状況になっている。
スカイドライブの福沢氏は、同社が2018年の設立以降、万博に向けて急ピッチで空飛ぶクルマの開発を進めてきたことを強調。事業を拡大しながら開発を進める中で、想定外の課題や、安全確保のための追加施策の必要性などが判明し、「万博が開幕する来年4月のタイミングで、安全を守った上で商用運航を行うのは厳しいと判断した」と説明した。具体的には、バッテリーやモーター、コンピューターなど多様な側面でさらなる開発が必要という。
一方で福沢氏は「大阪・関西万博は複数の空飛ぶクルマの機体が空港以外の同じ場所で飛ぶ貴重な機会になる」との見方を示し、「デモフライトでも実施されることの意義は大きいはずだ」と強調した。(黒川信雄)
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