米国で選挙集会中にトランプ前大統領が銃撃された事件は、世界に衝撃を与えた。日本では2022、23年、首相、元首相が相次いで襲撃され、警護態勢を大幅に強化。手荷物検査、金属探知機の使用に加え、AIやドローンなど最新技術の活用も進んでいる。警備関係者は「不測の事態に備え、改めて気を引き締めなおさなければ」と話す。
「徹底した警備で知られるアメリカで大統領候補が狙撃されるとは。近年起きていなかったはずだ」。警察幹部は、こう驚きを口にする。
国民の銃所持が認められている米国では、大統領や要人は、シークレットサービス(大統領警護隊)と呼ばれる専門のスタッフが警護に当たる。ある警察OBは「要人来日の際、自分たちで訪問先の状況や日本の警備態勢を事細かにチェックする。そこまでやるかというほどだった」と、「本場」の警護の在り方に驚かされたという。
日本では22年、奈良市で安倍晋三元首相が背後から銃撃され死亡。23年には、和歌山市を訪問した岸田文雄首相の近くに爆発物が投げ込まれる事件が発生し、警護の在り方が見直され、大きく強化されることとなった。
警察庁は警護の基本事項を定めた「警護要則」を改定。都道府県警の警備計画を警察庁が事前審査するほか、警護担当要員を300人以上拡充させた。また、銃刀法を改正して、インターネット上で銃所持をあおる行為を禁止するなど規制も強化している。
7月7日に行われた東京都知事選でも、街頭演説する要人に接近できないよう周囲に空白地帯を設置したり、聴衆を一定の場所に集めて柵などで囲ったりする対応をとった。区域内に入るには、手荷物検査や金属探知機の検査を受けなければならないようにして警戒。聴衆の中や会場周辺にも私服、制服の警察官を多数配置し不測の事態に備えた。
また、群衆内の異常行動を検知するAIが導入されたほか、警護ドローンを使って空から周囲を警戒する場面もあった。警備関係者は「使えるものはどんどん活用していく」と話す。
一方、今回のトランプ氏への銃撃は、遠距離からの狙撃とされる。国内でも、街頭演説などの会場が見える場所は事前に不審人物や不審物がないかチェックしたり、場所によっては警察官が巡回したりして警戒している。警察幹部は「何をしてくるか分からないものに備えるのが警備。緊張感を高めていかなければならない」と強調した。(橋本昌宗)
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